インタビュー

怒髪天 『Tabbey Road』

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シングル“歩きつづけるかぎり”が好調な怒髪天から、ついに真打ちとなるニューアルバム『Tabbey Road』が到着!
絶え間ないツアーによって2011年の日本のムードを目の当たりにしてきた彼らだから言えること、歌えること。
結成27年目の彼らがいま改めて拳に握るのは、<音楽の力>そのものである。

 

「俺ら4人で歌うってことは、会場みんなで歌うってこと。
                                                冬の時代こそ堂々と咲き誇ろう」(増子直純)

  「コーラス」という映画をご存知だろうか。舞台は第二次世界大戦の余韻が残る49年頃のフランス。

孤児や問題児を集めた寄宿舎に、ひとりの音楽教師がやってくる。

反抗的な生徒たちはそれぞれに問題を抱え、暗い瞳のまま心を閉ざしているのだが、

熱心な教師が合唱を教え始めることで次第にゆっくりと団結し、美しいハーモニーを磨くたびに

明るい表情を取り戻すようになる。

ここで描かれているのは、共に歌うことの楽しさ、喜び。音楽という芸術あるいは娯楽が

人にどんな力を与えるのかというテーマである。

 

「そう、ほんと歌って力あるんだよ! 去年ツアーしてみてつくづくわかった。

「俺の力にもなるし向こうの力にもなる。福島でライヴした時なんか特に、

目の前で音楽が役に立ってる、抑えてた感情が爆発して

今この場所から元気が出てるっていうのが如実にわかった。そんな経験なかった、これまで」




 こう語るのはロック界の頼れる兄ィこと増子直純。

漢の生き様であるとか、俺様バカ一代のゴーイング・マイウェイぶりとか、何かと精神論を語る機会が多かった彼が、

改めて<<音楽の力は素晴らしい>と力説するようになったのは、昨年の大震災が大きく関わっている。

巨大な悲しみ、そして無力感に押しつぶされそうな現実を前に、よくできた精神論はあまり役に立たぬもの。というか、

ご意見を拝聴する余裕がないのであろう。

それより先に、ひとつでも多く笑顔を増やし、少しでも前向きな気持ちにさせるもの。

それが歌なのだと、彼らは現場で実感した。

<あぁ、歌って凄いな、共に歌えるって素晴らしいな。>その気持ちひとつで作られたのが

ニューアルバム『Tabbey Road』である。




「ともかく楽しめるものを。みんなで歌えてみんなの力になる、前向きなものを作りたかった。

ほとんどの曲にシンガロングが入ってるけど、俺ら4人で歌うってことは、会場みんなで歌うってことだから」




元来わかりやすい歌詞、聞き間違えようのない歌い方で楽曲を発表してきた怒髪天だが、

今回はさらに念入りに<みんなのうた>を意識したという。独り善がりにならないテーマを選び、自分の話は極力排除した。





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繰り返すサビの歌詞を最後の一節だけを違う言い回しに替える、なんていうのは増子に言わせりゃ余計なエゴ。

誰もが間違えないように、一度覚えたらそのまま最後まで歌い続けられるように、ストレートにストレートを重ねた

メッセージが強く光る。

 


 「“雪割り桜”なんて特にそうだった。もうサビの歌詞はひとつでいいの。

これをみんなで歌うだけで、どれだけグッと来るかっていう。

ちなみに雪割り桜って、ほんと先走った、空気の読めない花なんだよね(笑)。

冬なのに我慢できずに咲いちゃうんだよ。でも日本全体がこれだけ暗くなって、

ほとんど非常事態みたいな冬の時代にさ、必要なのはそういうことでしょ。

春まで待ってても春がほんとに来るかもわかんないじゃん。

だったら今、堂々と咲き誇ろうぜって言いたかったね」




お馴染みのR&E(リズム&演歌)だけでなく、ファンクにハワイアン、ハードロックに昭和歌謡まで、曲調は幅広い。

しかし全体を通してのメッセージはこの言葉に集約されている。どんな逆境でも、どれほど先行き不安でも、

胸を張って前を向け。そして誰かがやってくれるのを待たずに自分でやれ。

 

パンクでいうところのDO IT YOURSELFが、怒髪天ならではの和風テイスト、この時代ならではの世情、

そしてオッサンたち特有のギャグセンスと、全員参加型の力強いコーラスに彩られながら

ワンアンドオンリーのオリジナリティーで花開いている。もともとアクと個性の強さは天下一品のサウンドだが、

人々の背中をドーンと押す雄々しさにおいては過去最高のアルバムになったといえよう。



 

冒頭の「コーラス」に話を戻すと、ここに<天使の歌声>の持ち主はいないし、溜め息するほど

素晴らしいハーモニーが聴けるわけでもない。

どちらかといえばガラガラ声のヴォーカリスト増子と、それを支える逞しいメンバーの大声があるだけだ。

しかし、震災によって傷ついたみんなの心は、このアルバムでどれだれ勇気づけられることだろう

被災地のライヴで共に歌い上げた時にどんな希望が見えてくるだろう。想像するだけでゾクゾクする。

音楽の力とは、まさにこういうことだ。

■New ALBUM……『Tabbey Road』Now on sale!

■SONG LIST……

01.押忍讃歌

02.もっと…

03.歩きつづけるかぎり

04.ホトトギス

05.ナンバーワン・カレー

06.夢と知らずに

07.愚堕落

08.そのともしびをてがかりに

09.雪割り桜

10.YO・SHI・I・KU・ZO・!






■LIVE……OK! Let's Go TOUR 2012 “夢追道中”

5/06(日)大阪城野外音楽堂

5/12(土)札幌道新ホール

5/13(日)札幌KLUB COUNTER ACTION

5/19(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE

5/20(日)青森Quarter

5/22(火)渋谷公会堂

5/23(水)下北沢SHELTER

5/29(火)浜松MESCALIN DRIVE

5/31(木)岡山IMAGE

6/02(土)熊本DRUM Be-9 V1

6/03(日)鹿児島SR HALL

6/05(火)滋賀U★STONE

6/07(木)和歌山CLUB GATE

6/10(日)仙台市青年文化センター

6/16(土)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE

6/17(日)郡山HIP SHOT JAPAN

6/19(火)HEAVEN'S ROCK宇都宮 VJ-2

6/23(土)富山MAIRO

6/24(日)金沢AZ

6/26(火)水戸LIGHT HOUSE

6/29(金)高松DIME

7/01(日)都久志会館

7/04(水)高知X-pt.

7/06(金)広島CLUB QUATTRO

7/13(金)中京大学文化市民会館プルニエホール

7/14(土)名古屋HUCK FINN

7/16(月・祝)ZEPP DiverCity TOKYO


※詳しくはHPにて。

 


■ PROFILE…怒髪天(どはつてん)

増子直純(Vo.)、上原子友康(Gt.)、清水泰而(Ba.)、坂詰克彦(Dr.)という不動のメンバーで活動中。

R&E(リズム&演歌)という独自のジャンルを確立し、精力的にライヴ活動を展開し、幅広い支持を集めている。


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記事内容:TOWER 2012/4/20号より掲載

 

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2012年04月20日 12:00

ソース: 2012/4/20

TEXT:石井恵梨子