インタビュー

前田綾子

新レーベル第一弾は、真島俊夫とのコラボレーション

今春、8com Entertainmentという新レーベルが始動。第1弾は、フルーティスト・前田綾子が、トップ作編曲家の真島俊夫とコラボレートした『chez M(シェ・エム)』。

「フレンチレストランみたいなタイトルですが(笑)、パリにいた頃から〈chez〉という言葉をよく使っていましたし、Musique(音楽)に込めたMはもちろん、真島さんのM、ディレクター&エンジニアの天野正道さんのM、前田のMなど、いろいろなMが集まってできたということから、この〈Mのもとで〉というタイトルにしました」

いろいろなMといえば、収録曲も、クラシック、ポップス、ジャズとさまざまだ。

「私自身はクラシックを勉強しましたが、佼成ウインドではトップレベルのジャズマンやポップスプレイヤーとの共演も多く、ジャズの中の大切なもの、ポップスの中の大事なものを、至近距離でずっと学んできました。ジャズやポップスの、聴いている人の気持ちを一瞬にしてパッと開かせる、そのシンプルな力は素晴らしい」

共演陣にも、篠崎ストリングスをはじめ、考えうる限りの最高の顔ぶれが集まった。なかでもジャズファンが見逃せないのがトゥーツ・シールマンス。ツアー中に父親の訃報に接し、最期にあえなかった哀悼の意を込めて書かれた《オールド・フレンド》。この特別な曲は、滅多にカヴァーさせないと聞いているが…。

「真島さんが親交をお持ちで、今回のアルバムには彼自ら個人的に参加を申し出てくださいました。ただし、とてもデリケートな曲ですし、それが決まったのも、アレンジと私の音をお聴かせした後のこと。それだけに、トゥーツさんから『ありがとう。パパも天国で喜んでいる』とお褒めの言葉をいただき…もう私、いつ死んでもいい(笑)」

クラリネットの赤坂達三とは2曲共演。うち1曲が真島のオリジナル作品である《黄昏色》。今回のアルバムを作るきっかけとなった曲である。

「去年たまたまご縁をいただき、被災地13ヵ所で演奏したのですが、そのすべての場所で演奏したのが《黄昏色》です。どなたもご存じないはずの曲なのに、皆さんが、なつかしいとか、気持ちが動かされたとか、言ってくださる。心の琴線に触れるメロディなのでしょう。本当に音楽の力を感じることができました」

発足したての小さなレーベルの第一弾『chez M』。今後の挑戦にも期待したい。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年04月25日 11:20

ソース: intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)

取材・文 小泉晴美