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インタビュー

女王蜂 『蛇姫様』

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2011年、日本のロック・シーンを激震させたセンセーショナルなメジャー・デビューから9ヶ月、
早くも完成した女王蜂の新作『蛇姫様』は「女王蜂とは何者なのか」という問いに最初の答えをもたらす傑作だ。
テーマはずばり<破壊>。そしてその<破壊>の先に待ち受けるものについて、アヴちゃんに話を訊いた。

「このアルバムを聴いてくれる<あなた>は、<私>になってしまうんじゃないかしら」

 女王蜂のメジャー・デビュー盤『孔雀』が文字通り<衝撃>だったとしたら、
5/23にリリースされるニュー・アルバム『蛇姫様』は、その衝撃の先に待っていた
決定的な一枚であり、女王蜂にセンセーションを越えた永遠の命が宿った
マスターピースだ。
彼女達はこの『蛇姫様』のテーマは<破壊>だと宣言しているが、このアルバムにおける
破壊とは、焼け野原のような崩壊で幕を下ろすものではない。
むしろ完膚なきまでに破壊された先に女王蜂と共に新たな世界を迎える、
このアルバムによって聴く者を未だかつてない地平へと連れ去ろうとする儀式のような
アルバムなのだ。その根底にあるのはアヴちゃん(Vo.)の原風景であり、
女王蜂の始まりの物語とでも呼ぶべきものだ。



「このアルバムには初期の曲が多く収録されているの。“ストロベリヰ”は私が15歳の時に書いた曲だし、
“無題”は16歳の時に書いた曲。15歳の頃の私は本当に目茶苦茶だった。生きているのが辛い、
息をするのも痛い、っていうレベルじゃなくて世界と触れる肌が痛いっていうか。
完全に世界との不和ってやつよね。自分はここにいてはいけない人間だとずっと思ってた。
15歳から女王蜂を始めるまでの数年間、私が欲しかったのはこのアルバムなのかもしれない。
当時このアルバムがあったら、私は女王蜂を始めていなかったかもしれないもの。
そんな古い曲と一緒に最近書き下ろした曲も3曲(“レザー”、“イミテヰション”、“歌姫”)収録されているんだけど、こうやって昔の曲と今の曲を比べてみても私は全く変わってないって再確認できたのも嬉しかった」



そう、アヴちゃんの脳内に渦巻いている極彩色で過剰なエモーションを核とする女王蜂の本質は、
今も昔も殆ど変わっていない。変わっていないけれども、その本質を描き出すタッチは本作に至ってより大胆かつ
奔放になり、細部の描写もまた残酷なまでに研ぎ澄まされてきている。たとえば“無題”は堕胎に死を象徴した
あまりにも壮絶なナンバーだし、アルバムのラストを飾る“鉄壁”は死すら潜り抜けた末の再生が描かれる、
ある意味で女王蜂史上最も温かな救いを感じさせるナンバーでもある。生と死の、絶望と希望の瀬戸際から
瀬戸際へと激しく往来しながら聴く者を内側から突き上げていく本作は、聴くという行為をほとんど<生きる>ということ
とイコールで結ぶような、凄まじい一枚でもある。



「“無題”は最初はもっと哀しい曲だったの。でも、このままだとこの曲を聴いた人が
みんなだめになってしまうんじゃないかって。だから5分の歌が終わった後に5分の無言のインストを入れて
10分の曲に仕上げたのね。この5分のインストが入ったことで救いが生まれたんじゃないかな。
この曲を書いた時は生きることの意味と死ぬことの意味を凄く考えたし、みんな泣きながら演奏していたわよね。私って人を簡単に悲しませたり喜ばせたりすることができるんだけど、この曲とこのアルバムで目指したのは
その先の感情よね。“鉄壁”は私自身って感じがする。愛が溢れているし、最後に浄化される曲なのよ」



 

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 メジャー・デビューからの1年足らずのうちに2枚のアルバムと1枚の映像集(「雀蜂」)をリリースするなど
怒涛の成長期・放出期にある女王蜂だが、それが彼女達にとっては極めて自然な状態であり、成長・放出し続けないと
息ができないほどの切実さを持って女王蜂の音楽は生み出されているんだということが、『蛇姫様』を聴けば
理解できるはずだ。このアルバムによって、女王蜂は過去のリヴァイヴァルや引用によって語ることが一切できない
唯一無二の表現体へと上り詰めていくだろう。



「今回は昭和歌謡度がゼロなのよ。『孔雀』を出した時にみんなに<女王蜂は昭和歌謡だ>って
言われまくったから、<わかったわ、じゃあやめます!>って(笑)。このアルバムは何風って言えないし、
そういう音楽のボキャブラリーをぶち壊したいっていう気持ちはあったわね。どの曲も展開が異常でしょ。
私はAメロ、Bメロ、サビっていうお決まりの曲が書けないし、ヘッド・ミュージックを書くこともできない、
聴いてくれる人の胸倉を掴まないと歌えないしね。“鏡”とか本当に目茶苦茶なんだけど、
それでもキレイでしょ。44分間、このアルバムを聴いた人はどうなっちゃうのかしらってよく考えるのよ。
そうね、このアルバムを聴いた<あなた>は、<私>になってしまうんじゃないかしら」






■New Album……『蛇姫様』5/23 on sale!


■SONG LIST

01.鏡

02.ストロベリヰ

03.レザー

04.イミテヰション

05.歌姫

06.無題

07.Ψ

08.鉄壁


■LIVE……女王蜂 「孔雀婦人 追加公演<仮面の宴 第二夜>」

6/1(金)SHIBUYA-AX

※詳しくはHPにて

■ PROFILE…女王蜂(ジョオウバチ)

アヴちゃん(Vo.)、やしちゃん(Ba.)、ルリちゃん(Dr.)、ギギちゃん(Gt.)からなる4人組バンド。
2010年「FUJI ROCK FESTIVAL'10」の「ROOKIE A GO-GO」に抜擢され、その衝撃的なパフォーマンスが
話題となり翌年9月『孔雀』でメジャーデビュー。
今年も、さらなる盛りあがりを見せるであろう彼女たちから目が離せない。



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記事内容:TOWER 2012/5/20号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2012年05月20日 12:00

ソース: 2012/5/20

TEXT:粉川しの