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インタビュー

石毛輝

 

the telephonesでの佇まいとは違う、より素の彼が浮かび上がったソロ2作目。穏やかなパーソナリティーが反映された手作り感が素敵です!

 

 

昨年末にさいたまスーパーアリーナでのライヴを成功させ、名実共にトップ・バンドの仲間入りを果たしたthe telephones。そのフロントマンにしてコンポーザーの石毛輝が、2枚目のソロ・アルバム『My Melody(Diary Of Life)』を完成させた。前作『from my bedroom』同様、曲作り自体は彼の自室で行われ、プログラミングから楽器演奏まで、そのすべてをみずからが担当。サイケデリックな音像と牧歌的なメロディー、簡潔な日本語詞で紡がれた、何とも穏やかで温かみのある作品に仕上がっている。また本作は、以前から「日記を書くように曲を書いてきた」という彼が、1日の出来事をそのまま曲にした〈音日記〉でもある。

「聴いてくれる人はthe telephonesが好きな人も多いと思うんですけど、ソロの音楽にはわかりやすいキャッチコピーっていうか、入りやすい窓口を作ることが大事かなと。それで、前から言ってた〈日記〉というのを突き詰めてみようと思ったんです」。

今年の1月2日に作ったという“The New Year Song(Hello 2012!!!)”、筑波山に行って作られた“Mount Tsukuba(20/Nov/ 2011m)”、皆既月食にインスパイアされた“Lunar Eclipse(10/Dec/ 2011)”など、収録曲のタイトルだけを見てもまさに日記。自身で撮影した映像を観ながら曲作りをしたり、フィールド・レコーディングをした自然音が曲に入っていたりと、実際の体験がそのまま曲へと繋がっている。

「サンプルを入れるにしても、フリー素材だと容赦なく〈いらねえ〉って切っちゃったりするけど、自分で録った音を使うと、ひとつひとつの音に愛着を持って作れるんですよね。川の音をとってみても、〈上流の音のほうがキラキラしてたな〉とか(笑)。楽器で作れない音ってすごく魅力的なんですよ。古着の一点ものみたいな感じで、他に存在しない音だから、そういう音を使うのがいまいちばん個性が出るかなって」。

本隊では派手なサングラスをして〈DISCO!〉と叫び、音楽が持つスペクタクルな側面を体現している石毛だが、彼がソロ作で提案しているのは生活と密着した音楽、日常の延長線上にある音楽である。〈音日記〉というコンセプトは、そんな志向性をわかりやすく伝えていると言えるだろう。

「変わらない日常の映像に合う音楽を作りたかったんです。掃除をするときにかけてくれるとか、それぐらいでいいと思うし、夜散歩しながら曲を聴くのが好きなんで、そういうシチュエーションに合う感じのものを作りたかったっていうのはあります。それってthe telephonesだと難しいじゃないですか? 夜中にひとりで歩いてるときに、〈DISCO!〉って言われてもね(笑)」。

こんなジョークが飛び出すぐらい、取材中の彼は終始穏やかで、ジェントルとさえ言える雰囲気を持っている。それは2枚目にして早くも確かな作家性を感じさせているソロ作品にもそのまま反映されているものだ。素顔の石毛輝が愛すべき音楽で綴った〈音日記〉を、ぜひ楽しんでほしい。

「ソロは音楽研究の場でもあって、チャレンジもいっぱいしてるから、それはもちろんバンドにもフィードバックされていくと思います。ただ、メロディーはあくまで僕のもので、シンプルに作りたいっていうのはある。〈意外とメロディーセンスあるじゃん〉って思ってもらえたら嬉しいですね。ただ、この作品が入り口になって、これに通じている他のアーティストの作品も聴いてほしいっていう気持ちがあって、それは結局the telephonesでやってることとも変わりはないんです」。

 

▼関連盤を紹介。

左から、石毛輝の2010年作『from my bedroom』、石毛が参加した2012年のコンピ『代沢時代 〜Decade of Daizawa Days〜』(共にDAIZAWA)

 

 

▼the telephonesの近作を紹介。

左から、2011年作『Rock Kingdom』、2011年のミニ・アルバム『100% DISCO HITS! SUMMER PACK』、2012年のEP『D.E. N.W.A e.p.』(すべてEMI Music Japan)

 

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年05月16日 17:58

更新: 2012年05月16日 17:58

ソース: bounce 344号(2012年5月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武