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インタビュー

LONG REVIEW――“オルタナ・ガールフレンド” 「Live Tour 2011 “Very Special”」



愛を求めて紡がれる彼女のソウル



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ユーモラスな音を鳴らしながらシンセと楽しげに戯れるChara、PAについて真剣に打ち合わせるChara、「緊張しています!」とおどけてみせるChara――昨年末に開催されたツアーの最終日を収めたライヴDVD「Live Tour 2011 “Very Special”」は会場入りから開演までの舞台裏の風景で始まるが、その短い時間のなかでも彼女の表情はくるくると変わる。それがステージ上ともなればなおさらだ。2011年作『Dark Candy』に参加したmabaunaやCurly Giraffeこと高桑圭など、ツイン・ドラムを備えたアーシーなバンド・サウンドにふわりとエレクトロニクスを浮かべた音世界のなかで、柔軟な彼女のソウルが唯一無二のハスキー・ヴォイスに乗って解き放たれていく。

そんな彼女が持つ多彩な表情のうち、奔放な魅力で惑わす〈ガール〉な側面を目一杯に弾けさせた作品が移籍第一弾シングル“オルタナ・ガールフレンド”だ。表題曲は、パンキッシュにバウンスするビートと共にコンプがかったシンセ・ベースやカラフルな鍵盤の音色が飛び跳ねる、コケティッシュなダンス・ロック。招かれた新顔のゲスト――ORANGE RANGEの……というより今回は〈delofamiliaの〉と言ったほういいかもしれないNAOTOとRISEのKenKenも、それぞれたおやかな空気を含ませたニュアンスのあるギターとグルーヴィーなベースで極彩色の音世界に華やぎを添えているが、それにしてもCharaの声だ。ときに甘く囁き、ときにエキセントリックにシャウトし、いくつもの声を操って挑発するCharaの歌に惹き込まれずにはいられない。これで最後に〈でも、包まれたい〉なんてポツリとつぶやかれた日には、筆者の女性目線ですらもうメロメロだ。

カップリングは、今年2月17日にテンポを落としたアコギの弾き語りで披露された“大切をきずくもの”のライヴ・ヴァージョン。温かみのあるフォーキーな歌唱がじんわりと沁みる。

この20年の道程のスタートラインから近作までを網羅した冒頭のDVDのセットリストもそうだが、アレンジうんぬんの話とは別に、どの年代の歌もいまのCharaにフィットしていることが興味深い。それは色褪せることを知らない楽曲の強度を示すものでもあろうし、常にマックスで爆発する彼女の感性が一過性のものではないことの証明でもあるだろう。人間的な成長や環境/音楽性の変化はあれど、そのコアにあるのは愛を求めて紡がれるソウル・ミュージックなのだと、改めて感じることのできる2作品だ。


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年05月30日 18:00

更新: 2012年05月30日 18:00

文/土田真弓

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