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インタビュー

一十三十一『CITY DIVE』



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[ interview ]

AORやフュージョンなど、軽やかでメロウかつアーバンでブリージンなチャームを持ったサウンドを下敷きに、日本独自の解釈を書き込みながら発展していった〈シティー・ポップ〉。そもそも80年代にもてはやされたムーヴメントではあるけれど、ここ最近はポップ・クリエイターやDJによる再注目も……というところに登場したのが一十三十一のニュー・アルバム『CITY DIVE』だ。

2002年のデビュー当初からシティー・ポップの匂いをその音楽性のなかに含ませ、以降、多方向にシンガー・ソングライターとしての可能性を広げていった彼女だが、今回は徹底したシティー・ポップ路線、いや、〈路線〉ではなくそのものズバリと言ってもいい作品を作り上げてきた。

もちろん、そこにはシティー・ポップに対する愛情と同レヴェルのナウな感性が注ぎ込まれているのだが、このアルバムのアレンジャーとして彼女を好サポートしているのが、その道のマスターであるクニモンド瀧口(流線形)と、眩い80sテイストを散りばめた2010年作『Melodies Memories』、2011年作『Studio Vacation』が評判となったDORIAN、そしてアーバン&メロウをキーワードとした作品をクリエイトする音楽チーム・PAN PACIFIC PLAYAのKashif a.k.a. STRINGSBURNという、〈だいぶ〉豪華なメンツ。ということで今回は、そのお三方にも同席をしていただき、新作について語っていただきました!



10年目にしてあえて〈シティー・ポップ〉って言っちゃう



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(左から)Kashif a.k.a. STRINGSBURN、一十三十一、DORIAN、クニモンド瀧口



――まずは……お久しぶりのアルバムです。

一十三十一「オリジナルは5年ぶりになりますね。私、今年でデビュー10年になるんですけど、ここ最近、KashifくんたちとJINTANA & EMERALDSというドゥワップ・グループをやったり、DORIANくんの『Studio Vacation』にフィーチャリングされたりって忙しくしていたわりには、活動の半分は(アルバムを)出してなかったっていう(笑)。自分でも驚きですね」

──まあ、プライヴェートのほうがお忙しかったということもありますし。

一十三十一「そう、前のアルバム『Girlfriend』から現在までって、ポリープの手術があったりとか、出産があったりとか……で、震災もあって、そのたびにいろんな意味でリセットされて、デトックスされて、これでもかっていうほどミュージシャンとしての自分が丸裸の状態になっていったんですね。そうすると、自分がいちばんやりたいものっていうのが明確になってきて、それで今回は迷いなく、シティー・ポップを堂々とやりたいなって思ったんです」

――そもそもシティー・ポップを標榜した音楽スタイルでデビューしましたし、やはりご自身の根幹を成している音楽ということですかね?

一十三十一「そうなんです。私が生まれてから15年ぐらい、父が北海道で〈BIGSUN〉っていうトロピカル・リゾート・アイランド・レストランを経営してたんですけど、かかっていた音楽もAORとかブリージンな曲が多くて、たぶん私の潜在意識のなかでそういう音楽が根付いていったと思うんですね。ちなみに私の音楽にエキゾティックな要素が加わったのは、父がその後に開いた〈マジックスパイス〉というスープカレー屋さんでかかっていた音楽の影響で……っていうのに最近気付いたんです。エキゾティックな世界観とアーバンな世界観ってかけ離れているものなのかもしれないですけど、父のおかげで私のなかにはすごく自然に根付いていって、そういうものを自分の音楽に落とし込んできたんですね。以前はジャンルみたいなものをあえて言わずにやってきたんですけど、10年目にしてあえて〈シティー・ポップ〉って言っちゃう、言ってもいいなと思えたんです」

――根っからの〈シティー・ポッパー〉とでも言うか、今回の『CITY DIVE』で聴かせているようなサウンドが一十三十一さんにはしっくりくるなあって思います。

クニモンド瀧口「一十三十一ちゃんの声が都会的なんですよ。そこがやはり大きいなあって。今回、思いっきりシティー・ポップ……という表現が良いか悪いかわからないですけど、そういった方向に振り切ったコンセプトで……ということで話が来たので、それはおもしろいねってことでいっしょに作りはじめて。若いクリエイターの2人、DORIANくんとKashifくんにも加わってもらって、より現代的なシティー・ミュージックになったと思います。一十三十一ちゃんの声の、非常にアーバンな部分っていうのもすごく出ていて、サウンド観とかメロのラインとかコード進行なんかは僕の世代からすればやっぱり懐かしいんだけど、いまを生きてる感じがするというか、2人に加わってもらったことによって現代のダンス・ミュージックに近いところに収まったんじゃないかなあ」


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掲載: 2012年06月13日 18:00

更新: 2012年06月13日 18:00

インタヴュー・文/久保田泰平