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インタビュー

LONG REVIEW――lynch. 『INFERIORITY COMPLEX』



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メジャー進出後、初のアルバムにあたる前作『I BELIEVE IN ME』はそれまでの彼らにとっての集大成のような一枚だった。歌謡曲的なキャッチーさを追求するソングライティングと、ヘヴィー・ロックを軸に自由自在に変化するサウンドという両輪をフル稼働させた同作は、その時点でのポテンシャルを遺憾なく出し切った、バンドにとっての一里塚と言える。

そして新作『INFERIORITY COMPLEX』では、轟音が彼らの新章の始まりを告げる。冒頭からいきなりのブラスト・ビートとデス・ヴォイスで攻め立てる"MOMENT"の、スリップノットに勝るとも劣らないアグレッションが強烈! デジタル化する前のTHE MAD CAPSULE MARKETSにも通じるハードコア"ANIMA"や、アタックの強いチョッパー・ベースを採り入れた新機軸の"NEW PSYCHO PARALIZE"など、とにかくラウドでスピーディーな、スクリーモ~ポスト・ハードコア色が濃くなった。

そうやって鋭利な表現へと振り切りつつも、メロディアスで妖艶な部分もしっかりと息づいており、それがサウンドのヘヴィーネスと鮮やかなコントラストを描く。それは90年代中盤のLUNA SEAを思わせるポップな"FROZEN"や、アウトロにピアノの独奏を入れた表題曲にも顕著であり、より表現力の振幅が増している。

ポップでデカダン、攻撃的で耽美的。そのユニークさは〈自分たちにしか出せない音を出す〉という、ロック・バンドとしての本分に忠実な証だと思う。


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掲載: 2012年06月27日 18:01

更新: 2012年06月27日 18:01

文/鬼頭隆生