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インタビュー

新垣恵・宜保和也

コンビ唄が伝える、さまざまな愛のかたち

コンビ唄、といわれても、たいがいの人はピンと来ないだろう。でも2人組で歌うことなのだろう……と、そのくらいの予想はつくだろう。そのとおり、いわゆるデュエット曲のことを指すのだけど、それも沖縄民謡に限っての呼び名だ。なんとなく 〈デュエット〉より〈コンビ〉の方がより近しい印象があるのだけれど、どうだろう。

それはともかくコンビ唄。たとえば本土でもよく知られている《十九の春》。

(女)〽いまさら離縁というならば、もとの十九にしておくれ
(男)〽枯れ木に花が咲くならば、十九にするのもやすけれど

と掛け合うこの唄。別れを拒んでこれから修羅場、のはずだが、クスッと笑ってしまうユーモアを感じないだろうか。この曲に限らず、コンビ唄は圧倒的に愛や恋にまつわる唄が多いそうだ。まあ男女の掛け合いなのだからそれも当然か。

「普通の唄を練習するようにはいかないんです。やっぱり2人揃わないと微妙なニュアンスがつかめなくて。個人練習ができない(笑)」と語るのは、古典音楽から民謡までをこなし、“じんじん”というユニットを組んで活動している新垣恵・宜保和也の2人組。そして彼らも参加しているのがコンビ唄ばかり集めた本作だ。他にもいくつもの民謡研究所から(まるで代表選手のように)集められた、ベテランから若手まで17名の唄者が参加したこのアルバム。しかも唄と三線を中心にとてもシンプルなスタイルで収録しているのもうれしいところだ。唄三線をじっくり楽しみたい民謡好きにはたまらない趣向だろう。

「僕たちは3曲参加しましたが、収録した17曲は知られているものから、通好みの曲まで、ヴァラエティーに富んでますよ」と、先述のお二人。浮かれる気持ちから切ない恋心、はたまた辛辣な別れ唄まで、歌詞の中身も色々だ。こんな歌に挑むなら、さぞかしご自身も修羅場をくぐり抜けて来たのでは? と意地悪な質問をぶつけると「いえいえ、まだまだ」とさらりと交わされてしまった。

ともあれ、こうしたコンビ唄には、物語性というか感情のやりとりというか、普通の民謡曲とはちょっと別の魅力が感じられる。きっと民謡酒場あたりでは、コンビ唄をばっちり決めるのがかっこ良さの一つの基準ではないか、とも思う。男女の唄声が織りなす様々な物語を楽しんでみたい。

LIVE INFORMATION
『宜保和也 東京ワンマンライブ! 1DAY'S「星に願いを」』
7/7(土)19:00開演  Live Cafe mono(高田馬場)
『宜保和也 東京ワンマンライブ! 2DAY'S「月に想いを」』
7/8(日)19:00開演  沖縄料理「ハイビスカス」 (王子)

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年07月03日 12:59

ソース: intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)

取材・文 渡部晋也