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インタビュー

キケ・シネシ

キケこそがアルゼンチン音楽の真髄だ!

5月のイヴェント『sense of “Quiet”』で、カルロス・アギーレのコラボレイターとして初来日したアルゼンチンのギタリスト、キケ・シネシ。日本ではまだほとんど無名の存在だが、終わってみれば、今回観客から一番熱い反応を引き出したのは彼だったかもしれない。各地のライヴ会場では、彼のCDが飛ぶように売れていたという。

1960年にブエノス・アイレスで生まれたシネシは、弱冠20歳でディノ・サルーシとの共演を開始し、今日まで、ギタリスト/作曲家として、フォルクローレとジャズ、クラシック、タンゴ等が溶け合う独特の世界を築き上げてきた。

「8歳でギターを弾き始め、10代の頃はエレキ・ギターを手に、主にロックやフュージョンなどを演奏していた。そんな時に出合ったのがディノ・サルーシだった。彼はバンドネオンを弾きながら絶叫するように歌い、フォルクローレとジャズが混ざったような新しい音楽をやっていたが、一般的にはほとんど理解されていなかった」

サルーシとのグループで活動しながら、シネシは、音楽家としての技術や哲学を確立していった。

「サルーシとの経験は、人生の学校だった。彼はいつも、そこに山があり、笛を吹いている人がいて、風が吹いてくる…といったような絵画的な言葉でフォルクローレについて説明してくれた。詩人なんだ。実際のところ彼がやっていたのは伝統的フォルクローレではなくフュージョンだったと思うが、しかし細部には間違いなくフォルクローレが息づいていた。そういった彼のスタンスを通して、僕もフォルクローレの本質というものを探求するようになったんだ」

が、同時にロック的だったりクラシック的だったりするところが、シネシのギターの魅力である。

「ロックに関しては、特にスピネッタからの影響が大きい。14歳の時、初めて聴いた彼の歌の歌詞から受けた衝撃は計り知れないものだった。アルゼンチンにおいて彼は今も、毎日人々に新しいパンを提供し続けるパン屋のような存在なんだ」

そして、現在の盟友カルロス・アギーレについては、「その出会いは一つの奇跡だ」と語る。

「そう、新しい化学反応を引き起こしてくれる奇跡なんだ。彼の音楽はいつも、彼の住むパラナに旅をするような不思議な浮遊感で僕を包んでくれる。それは、音楽にとって極めて重要なことだ」
既に5曲録音したというこのデュオでのアルバムが登場する日も、そう遠くないはずだ。

photo by Ryo Mitamura

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年07月04日 19:16

ソース: intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)