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インタビュー

INTERVIEW(2)——自分の才能をストレートに音楽へと還元する



自分の才能をストレートに音楽へと還元する



小林太郎_Alive1



――『MILESTONE』っていうタイトルは、まさにいま話してもらったことをそのまま表してるわけですよね。自分のありのままを形にできた、いちばん最初の作品っていう。

「そうですね。自分自身で気付けたっていう意味で画期的な出来事だったし、何か道しるべが、後ろ側だけじゃなくて、前にもあるような気がしたんですよ。器を返すタイミング、自分の才能を誰かに還元するタイミングっていうのも、すでに決まってるというか、自分が決めることじゃないような気がして。前にも後ろにも道があって、自分はただ転ばないように、止まらないように歩いていくだけ。そういう意味も含んだタイトルですね」

――なるほどなあ、ひとつ達観したような感じがあるよね。

「いろんなことを考えるタチなんで、何か自分のなかで些細なことをちょっと変えるだけで、もっとスムーズにいくんだろうとは思ってたんですけど、そのちょっとを変えるために、音楽を始めてからずっと悩み続けてて、半年ぐらい前にやっと変わったと思えて」

――結果的には、1回ソロをやった後でもう一度バンドをやったっていうことが、いちばんのきっかけにはなったわけですか?

「いちばんデカかったのは震災ですね。俺と同じ立場にいる人たちが、その立場なりにいろんなものを発信しているなかで、俺はなんで音楽をやってるのかわからなかったから、そのとき心のなかに置いてあった悩みを引っ張り出して、自分が音楽をする意味っていうのと向き合えたのがいちばんデカかったと思います」

――実際に、震災の後は〈何かしなきゃ〉みたいな葛藤もあった?

「ありましたね。でも、いろいろ考えすぎて、何がなんだかわかんなくなっちゃって、その頃、本を読みはじめたんですよ。少しでも自分の頭のなかをスッキリさせようと思ったし、自分みたいな人が問題を解決するために努力をした軌跡が本のなかにあるかもしれないとも思って」

――特に影響を受けた本を挙げるとすると?

「仏典を読んだんですよ。俺はもともと偏ったものになりきるっていうのが合わないタチらしくて、例えば音楽であれば、音楽っていうものを必要以上に大きく捉えたくないなって思うんですよ。元は音を楽しむだけのものなのに、それを必要以上に高名なものにしたり、下劣なものにしたり、どちらにもしたくないなって。仏典に書かれてることがヒントになったっていうのは、〈確かなものは何もないっていうことだけが確か〉というか、俺にとってわからないものはきっと俺のものじゃないから、誰かに還元しなきゃいけないっていう考えに繋がって。そうやって、ずっと考えてたことがやっと一件落着した気がするんですよね」

――バンドかソロかっていう表現の手段に対しても、〈自分が何のために音楽をやるのか〉っていう表現の根本に対しても、ひとつの答えが出たと。

「歯車がやっと噛み合った気がしたんです。ちゃんと地に足をつけて歩ける第1歩目が、何か作品になる気がして、それが『MILESTONE』だっていう感じですね」


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掲載: 2012年07月11日 18:00

更新: 2012年07月11日 18:00

インタヴュー・文/金子厚武