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インタビュー

マーラ

photo : Teddy fitzhugh

キューバでの体験がもたらしたもの

2011年9月、来日したジャイルス・ピーターソンを捕まえ、『ジャイルス・ピーターソン・プレゼンツ・ハバナ・クルトゥーラ : ザ・サーチ・コンティニュー』について語ってもらった際にも話題に上がったマーラの『マーラ・イン・キューバ』。あれから約1年の歳月を経て、ダブステップ界の重鎮によるこのアルバムがいよいよ発表されるときが来た。

コーキとユニット、デジタル・ミスティックズを結成し、《Anti War Dub》をはじめとする数々の佳曲を生み出すと共に、レーベルDMZや同名の伝説的パーティも主宰するマーラ。そんなマーラは、自身のより実験的な作品や彼が注目するアーティストたちの作品をリリースするレーベル、ディープ・メディ・ミュージックのオーナーとして肩書きも併せ持っている。

このようにマーラのプロフィールを記すと、何やら彼が大物特有の威圧的な雰囲気を漂わす人物であることを想像しがちだが、素顔の彼はいくつかのインタヴューを見る限り、意外なほど謙虚で、なおかつとっつきやすい。

11年1月、マーラはジャイルスとキューバに向かう。ジャマイカ人の血を引くマーラが同国の土を踏むのは、初めてのことだった。そしてそこでマーラとジャイルスはロベルト・フォンセカのバンドが繰り出すリズム・トラックを録音すると同時に、フォンセカからキューバ特有のさまざまな伝統的リズムをレクチャーされる。

「音楽、カルチャー、すべてが新しい体験だった」とマーラは語る。「だから今回のアルバム・プロジェクトを控えて、ぼくは自分の音楽観やルーツを考え直さなきゃならなかった」

同年5月、マーラは再びキューバに飛び、『マーラ・イン・キューバ』の制作に取りかかる。

「実は、このレコーディング用にロンドンで録りためていたトラックの大半をボツにしたんだ」。そのときの様子を彼が打ち明ける。「実際に現地の空気やヴァイブを感じると、なんかしっくりこなくてね。で、結局、アルバムのほとんどをキューバで録り直したってワケさ。ぼくは楽曲を完成させるよりも、完成に至るプロセスのなかで新たな方法論を模索することに興味が向かうタイプの人間なんだ」

以上の発言から窺えるアーティストとしてのマーラの真髄は、本作『マーラ・イン・キューバ』に触れることで一層明らかになるだろう。

LIVE INFORMATION
『MALA JAPAN TOUR 2012』

11/2(金)CONPASS(大阪)
11/3(土)代官山UNIT『DBS 16th Anniversary』

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月31日 15:54

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 北浦知司(音楽ジャーナリスト)