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インタビュー

オリヴィエ・シャルリエ

作品の中へおりてゆくとき、火花のように生まれるもの

ひらかれた生気──オリヴィエ・シャルリエの音楽には、共に立つ人を同じ地平へ引き寄せて語りかける、親密で生き生きとした魅力があっていい、と聴くたびに思う。共に立つ、とは共演者だけではなく、聴いている私たちも含めての話。聴き古されたはずの曲も、彼のしなやかな雄弁にかかるとまた〈古典がいまを生きる〉ことの喜びを雄弁に教えてくれるようだ。

《ラ・フォル・ジュルネ「熱狂の日」音楽祭》への出演でもお馴染みの人だが、録音も多く、古典から近現代の知られざる作品の世界初録音に至るまでレパートリーは広大。「古典と未知の曲、その双方を軸に数多く録音できて幸せです!」と人なつこい笑顔で語るシャルリエ。サン=サーンスやピエルネなど近代フランス音楽(Erarto)、グリーグのソナタ(Harmonia Mundi)、はたまたデュティユーのヴァイオリン協奏曲《夢の木》やジェラールやグレグソンのヴァイオリン協奏曲(Chandos)といった近現代の作品録音にも積極的だ。

「タンギー、バクリ、デュサパン、B・マントヴァーニ‥‥など素晴らしい現代作曲家がたくさんいますし、マリウス・コンスタンの録音も出したいですね」と語りつつ、最近では弾き振りによる古典コンチェルト録音も実にいい。彼の弾く古典は、規範をなぞるような演奏とは違う、奔放ともまた違う自信がつやつやと響くようだ。オーヴェルニュ管と弾き振りで共演したヴィヴァルディ作品集(Transart live)など、楽しげに語る彼ご本人の人柄もなるほど思わせる演奏。

「ここに収録した《四季》もありとあらゆるアプローチがされてきた名曲ですが、私はすべての既成概念をいったん忘れて、まったく新しい気持ちで作品の前に立ちたかったのです」
とはいえもちろん、その長い演奏経験のなかで熟成されてきたものを忘れ去るわけではない。

「過去の作曲家が創った作品に息吹を与え、今の聴衆の手の届くところへ、現代に生きる作品として伝える──演奏家は作曲家と聴衆をつなぐ架け橋ですが、作品のスタイルや作曲家の言語を理解すると共に、作品のただなかへ誠実に降りてゆく、そこで火花のようにほとばしる感情から真なるものが見えてくるのでです。そこでは、自分のまなざしをも越えてゆくことが大事なのです!」

謙虚と誠実に徹するからこその自信が美しい。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年09月07日 15:34

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 山野雄大