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インタビュー

アーロン・ゴールドバーグ

ニューヨークの新世代ピアニスト筆頭格

様々なセッションに駆り出され、今もっとも多忙なジャズ・ピアニストと言われるアーロン・ゴールドバーグだが、どうも自分たちははざ間の世代と考えているようだ。ゴールドバーグは、ブラッド・メルドーが抜けた代わりにジョシュア・レッドマンのグループに参加し、有名になったが、ぼくたちまでがジャズの偉大なミュージシャンとの共演の夢が持てた世代だという。その後、次々と巨人たちが他界し、下の世代は、そういう夢が最初からなかった。それがどういう違いになったかというと、若い世代は、個人としてよりもグループとして有名になることに懸命だという。どうもこの差は、ジャズの基本に関わることと思っているらしい。

確かにゴールドバーグが多忙なのは、様々なセッションに呼ばれるからで、これはグループというよりは仲間という感覚だろう。マーク・ターナー、カート・ローゼンウィンケル、ルーベン・ロジャース等々、その仲間は、共にバークリーやマンハッタン音楽院等で一緒に学んだ時代に知り合った友人たちで、それぞれの個性や才能を互いに認め合っての仲間だという。今度の来日は、ゴールドバーグのトリオの新作『YES!』のプロモーションもかねたものだが、ベースのオマー・アヴィタル、ドラムスのアリ・ジャクソンJr.もそんな古い仲間で、このトリオの基本のコンセプトは、それぞれの個性を尊重し、自由にやることだという。だから、どういうサウンドとかリズムとかでグループの個性を作っていくというのではなく、それぞれが出し合ったアイデアに互いに刺激され、それを膨らましながらグループの世界が勝手に作られるという具合だ。

つまり、音楽に対して誰もがイコールな関係とゴールドバーグはいう。ただ共通に大切に思っていることは、スイングすることだという。それにスタンダードを捨てたくないともいう。おそらくそれがジャズの共通認識と言いたいのだと思う。それとメロディの大切さもゴールドバーグは強調した。人が歌うような音が出てきたら、そこで初めて人の感動が生まれるという。音楽が複雑化されると、そうした感動とは別のものになるだろうというのだ。つまりゴールドバーグたちがジャズにこだわるのはそうしたシンプルに楽しいダンスや感動させるメロディだけれど、でも、一体どうすればそういうものが生まれるのか、それが永遠の謎なんだよねと笑った。

撮影/米田泰久  写真提供/COTTON CLUB

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年09月11日 13:26

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 青木和富