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インタビュー

MERRY 『MERRY VERY BEST 〜白い羊/黒い羊〜』



MERRY



[ interview ]

MERRYの音楽性を形容する際にしばしば用いられる〈レトロック〉。これはレトロとロックを掛け合わせた造語だが、異形とも言える個性的な存在感は、結成以来、何も変わっていない。始動から10年を超えた彼らが放つ初のベスト盤『MERRY VERY BEST〜白い羊/黒い羊〜』を聴くだけでも、その面白味はすぐさま堪能できるはずだ。初期の代表曲から最新の7作目『Beautiful Freaks』のマテリアルまで、36曲を2枚のCDに収録。著名なフェスティヴァルをはじめ、従来以上にさまざまなステージに登場しつつある昨今、MERRY独特の匂いに惹き付けられるリスナー群はまだまだ増殖していきそうだ。



決まりごとがない



――いま、〈MERRYとはどんなバンドなのか?〉と訊ねられたら、どんな言葉で自己紹介しますか?

結生(ギター)「いまなら言葉で説明するよりも、まさに今回のベスト盤を聴いてほしいと言えますね(笑)」

ガラ(ヴォーカル)「ひと言で言うと、決まりごとがない、何でもありなバンドなのかな。これ、最初からすごく難しい質問ですよ(笑)。でも、MERRYって何だろうって、それを探しながらバンドを続けているところはあるかもしれない」

テツ(ベース)「側面はいろいろ言えるんですけどね。〈音楽の振り幅がすごく大きいです〉とか、〈ハチャメチャなことをやってます〉とか。でも、MERRYとは何かという核心は……確かにそれを探しながら続けてるのかもしれないけど」

健一(ギター)「自分も正直、わからないんですよね。バンドは生き物だな、と思えるからこそだけど……」

ガラ「ただ、世の中で観たことのない、聴いたことのない、おもしろいことをやろうって集まった5人が、いま、10年を超えて活動できている。その点では、ちゃんと世の中にMERRYというものを残せてきているんじゃないかなと思いますし、自分たちも日々進化し続けてきてるんじゃないかなと思うんですよね」

ネロ(ドラムス)「変わってないのは、哀愁とヘヴィーさと馬鹿さ加減じゃないですかね。その3つは挙げられると思います」

――いままでいくつかのトリビュート・アルバムにも参加してきましたよね。LUNA SEAであり、ブルーハーツであり、BUCK-TICKであり、THE STALIN/遠藤ミチロウであり、ニューロティカであり……。

ネロ「パンテラのカヴァーもやりましたね(コンピ『STAND PROUD! III』収録の“Strength Beyond Strength”)。

――ええ。さらに青江三奈の“伊勢佐木町ブルース”などのカヴァーもあります。つまり、こういった名前の並びだけを考えても、あまりないと思うんですよ。

ガラ「確かに。ノンジャンルがMERRYのジャンルみたいなところはあるかもしれないですね。今回のベスト盤も〈白い羊〉と〈黒い羊〉と、2枚のCDにそれぞれ歌モノと激しいものを分けてはいるんですけど、そのなかにはめっちゃいろんな要素が詰まってると思うんですよ」

結生「でもいま、そのトリビュートしたアーティストを全部足して割ったら、ちょっとMERRYには近付くようにも思いました(笑)。何かしら自分たちの要素として詰まってはいる、すべて影響されてるとは思うんですよ」

――個々にもっとも影響を受けたアルバムを挙げるとしたら?

結生「hideさんの『HIDE YOUR FACE』ですかね。何かもう習慣的な感じで……もともとX(JAPAN)が好きだったのもあるかもしれないですけど、発売された当時、生活の一部として常に自然に聴いてましたね。通学するときはMDウォークマンで聴いて、家ではCDで聴いて」

健一「僕はギターを始めた頃に聴いていたZI:KILLですね。アルバムを1枚挙げろと言われると難しいけど、『DESERT TOWN』とか『ROCKET』とか『IN THE HOLE』とか……いまだに歌詞を覚えているぐらいですね。目覚ましのBGMにしたり、聴きながら寝たり。もともと音楽がそんなに好きじゃなかったその頃の自分にとっては、新鮮だったんだと思うんですよ」

ネロ「90年代前半の全般ですかね。BODYとXとLUNA SEAとかまいたちと……。みんなドラムの人が前に出てるというか、バンドの主軸のような位置にいましたよね。だから、僕はツーバスじゃないとドラムじゃないと思ってました。出会ったのがその時代で良かったなぁと思いますね。アルバムというと……何ですかね。やっぱり唸るほど聴いたのは、D'ERLANGERの『LA VIE EN ROSE』ですかね。初めて聴いたときにはもう解散しちゃってましたけど、事務所の社長さんがエンジニアをしてて、〈バンドって手作りなんだな〉って、感動が後からきた一枚です。あとは最後のライヴ盤(『MOON AND THE MEMORIES…THE ETERNITIES/LAST LIVE』)かな、解散するときの。あれはもうすごかったです」

テツ「俺も90年代前半のアーティストでこの世界が好きになったので、すごく大事なんですけど、自分の血に流れているものを考えると、出身が名古屋なんで、黒夢であったり、SILVER ROSEであったり……。そのへんの音楽的な影響は強いのかなって。たとえば黒夢は、バンドが上に昇っていく様をリアルタイムで観ているわけですよ。そのなかでも特別な一枚だなと思うのは、メジャーでのファースト・アルバム『迷える百合達~Romance of Scarlet~』ですね。その後メンバーが脱退したりして、どうなるんだろうと思っても、むしろもっと大きくなっていった。気持ち次第というか、バンド・パワーってすごいなって、そういうのを学んだ感じですね」

ガラ「俺が親の影響で聴いてたのは、70年代のフォークとか歌謡曲、グループサウンズ。それが間違いなく俺の血、肉、骨になって、MERRYの哀愁とかレトロというところに活かされているとは思うんですよ。バンドをやりたいと思ったのは、群馬県人なので(笑)、やっぱりBOOWYやBUCK-TICKを聴いたことですかねぇ。そのうちに黒夢とかも聴くようになったんですけど、そういったバンドは自分のなかでは正統派だったんですよ。でも、その真逆だったのがTHE STALINでしたね。いまだに覚えてるんですけど、『虫』ってアルバムを聴いたときに、〈何だ、この人は!?〉って衝撃を受けたんですよ。歌詞のセンスもそうですし、ジャケットも丸尾末広さんが描いてるじゃないですか。僕はLP盤で持ってるんですけど、こういう表現の仕方もあるんだなって。それがMERRYに活かされてる。だから、BOOWYとかBUCK-TICKとか、グループサウンズとか、THE STALINとかの、カッコ良いなぁ、好きだなぁと思う部分の集合体がMERRYな気がします。最初の質問に戻っちゃうんですけど(笑)」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年09月26日 18:01

更新: 2012年09月26日 18:01

インタヴュー・文/土屋京輔