インタビュー

DRAGONETTE 『Bodyparts』



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ドラゴネットとは何者かと問われたら、〈カナダ音楽シーン最大の隠し玉〉と評して差し支えないかもしれない。夫婦でもあるマルティナ・ソーバラとダン・カーツを中心に2005年に結成され、現在はドラマーのジョエル・ストウファーを交えて活動するこのトリオ。これまでに2枚のアルバム──2007年作『Galore』、2009年作『Fixin To Thrill』──と精力的なツアーを通じて着々と評価を上げてきたが、昨年マーティン・ソルヴェグとのコラボ曲“Hello”が世界的に大ヒットしたことで、ここへきて一挙に知名度がアップ。去る4月には長らくデッドマウスが独占していたジュノ・アワードの〈ダンス・レコーディング賞〉に輝き、このたび満を持してのブレイク作となりそうなサード・アルバム『Bodyparts』で本邦初上陸を果たすというわけだ。マルティナのセンシュアルな歌声と、PVなどで前面に押し出されている彼女のスタイリッシュなイメージも強い印象を刻むだろうことは想像に難くないが、まずは初対面の日本のリスナーに、そのカリスマティックなフロントウーマンから自己紹介をしてもらおう。

「私たちは折衷的なポップ・バンドよ。自分たちの軽い思いつきを追いかけて曲を書いているんだけど、ビッグなシンセとビッグなビートを使って音を作ることが多くて、1〜2回聴いてもらったらいっしょに歌えるはずね」。

そう、デビュー当初はギター・ロックとエレポップのハイブリッドを志向していた彼らだが、作品ごとにエレクトロニック色を強めていき、本作では加工をたっぷり施した色とりどりのシンセ・サウンドによって、極めてグラマラスなダンス・ポップを展開。

「最初の頃はシンセよりギターに慣れていたのよね。それ以前は誰もシンセをプレイしたことがなくて、私たちにとってはどちらかって言うと実験に近かった。でも7年が経ったいま、たくさんのシンセのソフトウェアを試せるし、クールなサウンドもたくさん手に入る。そして今回はとにかく自分たちにとって新鮮に聴こえる音楽を作ることに専念したの。それを実現できて、良い作品に仕上がった気がするわ」。

もちろん、本作でもジャケを飾るのはマルティナ。「アルバムを作る労力と時間を惜しまないなら、ヴィジュアルも重視して当然だし、ヴィジュアルにうまく音楽を語らせられたら、サウンドや詞のインパクトはもっと強まっておもしろみが増すと思う」と話す彼女、実はかつてはフォーク系のシンガー・ソングライターだったそうで、ドラゴネットの曲を特徴付ける古風なメロディーセンスとストーリーテリングは、そういう経歴と無関係じゃないようだ。

「各メンバーの嗜好はかなり違うわね。時々そのいちばん極端な部分が表れて、カントリーやジャズ風の曲を書いたりするし、昔はスケート・パンクな曲もあった。でも大抵は3人で作り上げた、ドラゴネットの定義の範疇に収めてるの。私たちには、メロディーへのこだわりと、上質なメロディーを核に曲を構築するおもしろいアプローチ探しが大好きだっていう共通項があるのよ」。

そんな彼女たちはトロント出身ながら活動の拠点をロンドンに置き、マーティン・ソルヴェグ以外にもベースメント・ジャックスからシンディ・ローパーまで各地のアーティストと共演済み。ヨーロッパと北米の両方からインスピレーションを引いているだけに、非常にコスモポリタンな感性の持ち主でもある。

「これまで特定のシーンに属したことがなくて、それがプラスに働いたと思う。どっちみち、ミュージシャン稼業には欠かせない旅ってものにヤミツキだし、あちこちを訪ねるのが大好きだから」。

ゆえに日本進出に関しても3人は意欲的だ。マーティンのアルバム『Smash』では、日本のアイドリング!!!と共に“Big In Japan”なる曲でもコラボしているので、何か運命的なものを感じないでもないか?



PROFILE/ドラゴネット


マルティナ・ソーバラ(ヴォーカル)、ダン・カーツ(キーボード/プログラミング)、ジョエル・ストウファー(ドラムス)から成る3人組。ニュー・ディールのメンバーだったダンとソロで活動していたマルティナが地元・トロントのフェスで意気投合し、2005年初頭に結成。同年の終わりにはファーストEP『Dragonette EP』をリリースする。その後、ロンドンに拠点を移し、2007年にファースト・アルバム『Galore』を、2009年に2作目『Fixin To Thrill』を発表。2010年以降、カスケイドやドン・ディアブロ、マーティン・ソルヴェグらの作品に次々と参加して話題を集めるなか、このたび9月26日にニュー・アルバム『Bodyparts』(Universal Canada/KSR)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年10月12日 18:10

更新: 2012年10月12日 18:10

ソース: bounce 348号(2012年9月25日発行)

インタヴュー・文/新谷洋子