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インタビュー

MEG 『WEAR I AM』


祝10周年!……とはいえ、目線はもうその先へ。カラフルな着こなしを楽しめる『WEAR I AM』は彼女のWHERE I AMを示す最高のアルバムに仕上がったよ!

 

 

日本の良さを改めて感じて

ベスト・アルバム『BEST FLIGHT』を発表した2010年秋以降、国内での音楽活動を休止していたMEG。ざっと2年間のその期間は、日本とフランスを往き来しながらファッション・クリエイターとしての滋養を肥やしつつ、フランス限定で7曲のアニソン・カヴァーを配信リリースするなど、〈休止〉というにはアクティヴな時間だった。

「なんでもないマーケットのディスプレイを見ても美意識が高いなって思ったり、老舗のメガネ屋さんの店長のおばあちゃんのファッションが洒落てるなとか、そういうものを見て回ったりしてるなかで、ぼんやりとしていたヨーロッパの好きな部分が行くたびにちょっとずつ明確になってきて、それと同時に、日本の良さも改めて感じるようになってきて。結果的にいまはすごく日本が好きなんですよね」。

そして2012年……4月に件のアニソン・カヴァーを中心にした企画盤『LA JAPONAISE』を発表し、6月のシングル“TRAP”で本格的な国内活動再開のファンファーレを鳴らした彼女は、ここにニュー・アルバム『WEAR I AM』を完成させた。中田ヤスタカとのコンビネーションが長らく看板のように思われていたMEGのサウンドだが、今回は彼の他にも多数の作家陣が作品を盛り立てている。先行シングル“TRAP”の岡村靖幸&大沢伸一や、そのカップリング曲でもあった“セブンティーン・ランデヴー”のNARASAKIをはじめ、小西康陽や横山裕章(agehasprings)、元DOPING PANDAの古川裕、ボカロPとして知られる古川本舗、さらには前山田健一、☆Taku Takahashi(m-flo)、三浦康嗣(□□□)といった具合に。

「去年フランスでリリースしていたカヴァーたちは、日本で出すことを考えていなかったので、本当にいろいろなプロデューサーと作れて、それはそれの自由さがあって刺激になった。けれど、今年になってから、新しい制作チームに招いてもらったことは、私にとって大きな出会いで、まずチームのメンバー個々が大好きだし〈前例はないけど、こういうのやってみたらどうだろう?〉とか、柔軟に意見を交わせることが、新しいアイデアを形にするにはとても良い環境だと思うし、何より若くてパワフルな人たちばかりだから、現場が楽しいんですね。それぞれをすごく信頼してるので、私が先に〈これはこうでしょ〉って提案を投げてしまわずに、まずはチームから出てきたアイデアを待って、そのなかでおもしろいと思ったものをど    んどん皆で手分けして、私もそのなかで自分の役割を担うっていう。普通のことかも知れないですけど、そのあたりのことを自分で提案して決めてやってきた期間が長かった私としては新鮮だし、楽しいんですよね。今回のラインナップに関しては、皆さんが素晴らしいメロディメーカーであることは共通していて、誰が作ったものか知らずに〈この曲やりたい!〉って決めさせてもらった曲もあって、そこは軸になっています」。

 

振り返るよりも、先を見ている

多彩な作家陣によって編まれたアルバムは、南仏フレイヴァーのスウィンギンなナンバーから、ダウンビートのロックンロール、ナイティーなジャズ・ナンバー、エキゾチック、ドラムンベース、エレクトロ、ファンタジア……などありとあらゆるテイストを呑み込んだ楽曲が並んでいるが、それらヴァラエティーに富んだ楽曲群のそこかしこからはレトロな風合いであったり独特のノスタルジアが感じられ、アルバムのキャラクターをさらに際立たせている。

「そこは、なんとなく日本の良さを改めて感じたっていうところに繋がっていて。数年前に安西マリアさんの“恋の爆弾”をカヴァーさせてもらいましたけど、そのあたりの年代の歌が好きでよく買ったりしていて。特に女性が歌っている当時の歌謡曲は、すごく主張がハッキリしてるし、勢いみたいなものがあるし、切ない曲は単純に切ないし、言葉遣いがおもしろい。やっぱり、いままでは普通に身近にありすぎてあまり注目していなかったものの良さっていうのを改めて思ったり、新鮮に感じることが多いですね」。

そういえば今年の夏にデビュー10周年を迎えたMEGだが、『WEAR I AM』はアニヴァーサリー・イヤーを飾る10年の集大成的なものというよりは、これからの彼女の音楽活動がますます楽しみになってくる、頼もしさに満ちたアルバムだ。

「10年目というのはありますけど、そんなに振り返ってないですね、このアルバム(笑)。1から10というより、1から9で一区切りして、10からまた次のタームが始まってる、って感じがしています。先を見てると言いつつも具体的にどういうことをやっていくかはまだぴっちり決めていないけど、それが〈いまを作る〉ってことなんじゃないかなって思ったり。ありきたりな方向に向かって作業としてこなしていくなかで作る意味合いというのをあまり感じないので、わからない部分があるのがおもしろいし。そう思えるのはいまのチームや、ファンに対しての信頼が大きいです。そういった輪のようなものが少しずつでも広がっていけばいいなって思うし、〈次は何?〉ってわくわくしてしてもらえるきっかけにまず、このアルバムがなればいいなって」。

 

▼『WEAR I AM』に参加したクリエイターの関連作を一部紹介。

左上から、岡村靖幸の2011年作『エチケット(パープルジャケット)』(V3)、NARASAKIが在籍する特撮の2011年作『5年後の世界』(スターチャイルド)、PIZZICATO ONEの2011年作『11のとても悲しい歌』(ユニバーサル)、DOPING PANDAの2011年作『YELLOW FUNK』(ソニー)、ヒャダインの2012年のシングル“サンバ de トリコ!!!”(Lantis)、m-floの2012年作『SQUARE ONE』(rhythm zone)、□□□の2012年作『マンパワー』(commmons)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年10月03日 18:00

更新: 2012年10月03日 18:00

ソース: bounce 348号(2012年9月25日発行)

インタヴュー・文/久保田泰平

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