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インタビュー

金子健(KBS Trio)

ドラムレス・トリオの可能性

ベースの金子健、ギターの井上智が、米国ジャズ・シーンの実力派ピアニスト、ベニー・グリーンを迎えて結成したKBSトリオ。彼らの第2作にあたる新作『レゾナンス』が発表された。収録曲は、スタンダードとジャズのオリジナル曲中心の構成で全11曲。リーダーの金子に話を聞いた。

「このトリオはドラムレスのピアノ・トリオですが、ドラムを入れたトリオより、ピアノ、ギター、ベースという編成のほうが、ピアノとギターでメロディを分担できますし、アレンジの可能性も広がると思いました。また、ピアノ・トリオの原点ともいえるこの編成で、ベースとしての自分の役割も明確に表現できると思いました。ドラムレスのトリオであることを忘れさせるグルーヴ感、スピード感、スイング感をぜひ聴いてほしいですね」

新作では、トリオのコンビネーションに更に磨きがかかっている。テンポの速い曲でスイングする時も、バラードで旋律を歌う時も、意志の疎通に優れた、一体感のあるトリオ演奏を堪能できる。

「このトリオの場合、まず、曲のテンポやリズムを提案して、イメージを3人でまとめます。その中でイントロや進行のアイデアが生まれていくことが多かったです。(前作発表後に行なった)2010年の全国ツアーはトリオのコンビネーションを作るうえでとても有意義でしたし、そのツアーがあったので、新作のレコーディングへのモチベーションも高まりました。また、(3人は)世代的に同世代ですし、井上さんの存在もあり、うまくコミュニケートできたと思います」

新作『レゾナンス』は録音のクォリティがとても高いと話題になっている。そして、今回のレコーディングのために用意されたピアノは、名器ベヒシュタインC234セミコンサートグランド。ベニー・グリーンは、柔軟性のある見事なタッチで、強音から弱音まで、このピアノの特質を存分に引き出しながら、自在な演奏力を発揮している。

「レンジの広い音色豊かなピアノでしたね。ベニーさんはとても気に入っていました。彼の演奏は、とにかく、ボキャブラリーが多いんです。どんどん湧き出るフレーズとその音色の美しさ。彼の音楽や日々の生活から、ジャズに対しての真摯な姿勢を感じ、とても影響を受けます」

KBSトリオによる、インティメイトなピアノ・トリオ演奏には独特の味わいがある。その愉悦感漂う、格調高い味わい…。それは、このトリオの音楽の妙味であろう。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年10月12日 15:19

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 上村敏晃