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インタビュー

中村健吾

音楽家/ベーシストとしての確かな矜持を表出

米日を股にして活躍するベーシストの中村健吾の新作『ソングズ・イン・マイ・ライフ・タイム』は4年ぶり、通算6作目のリーダー・アルバムとなる。前作発表時との大きな違いは、活動の拠点を東京に置くようになったことがあげられる。

「2年になります。でも、家はNYにありますし、年に3、4回は帰っていて、NYのコネクションは今も大事に持っています」

そんな発言にあるように、今作もNYの精鋭を起用し、同地で録音されている。ウィントン・マルサリス率いるザ・リンカーン・センター・ジャズ・オーケスラの一員であるマーカス・プリンタップをはじめ、今30代半ばの脂がのった奏者たちが集められた。

「一緒にやったときに判る、人間性とか暖かみとかいう部分を、共演者には求めますね。魂レベルのものを重視します」

今作のトピックは、三管編成をとっていること。過去、二管編成で複数のリーダー作を作ってきたものの、三管での録音は今回が初めてとなる。

「もちろん三管も好きですが、今度も最初は二管で録る予定でした。それで、トランペットのマーカスとステイシー・ディラード(テナー、ソプラノ・サックス)に声をかけた。ところが、ステイシーが日程が合わなくってしまい、かわりにマーク・グロス(アルト)にお願いしたんです。そしたら、ステイシーもできることになり、これは三管で行けということだなと思いました」

三管となることでよりダイナミックになるアレンジは本人と守屋純子が出し合い、また現在デューク・エリントン楽団を率いるトミー・ジェイムズにも《上を向いて歩こう》の編曲を依頼した。中村の好きなミンガス、モンク、エリントンの曲、さらには自作曲などが選ばれるなか、日本の曲も《上を向いて歩こう》と、中村の父親が昔オルガンで弾いてくれた《月の沙漠》を披露。そうした選曲のもと深い情緒や衝動が折り合う演奏を聞いていると、今作はこれまでの音楽人生を括りつつ、彼の音楽家/ベーシストとしての確かな矜持を表出していると思わされる。『ソングズ・イン・マイ・ライフ・タイム』はそんな密度の濃さと、輝きを持つ。

「これを作れて、もう本望ですね。ライヴな感じで録ったんですが、最良の演奏が、最良の音で録れたと思っています。それから、日本で2年やった積み重ねが、やはりこのアルバムには出ていますね。本作は3.11以降にしか、生まれなかったと思います」

『中村健吾『Songs in My Life Time』CD発売記念ツアー』

10/26(金)神戸・サテンドール神戸
10/27(土)高松・スピークロー
10/28 岡山・勝福寺
10/29(月)広島・スピークロー
10/30(火)高知・アトラクト・ラルゴ
11/1(木)館林・文右衛門ホール
11/2(金)東京・Body and Soul
11/3(土)小布施・BUD
11/4(日)富山・総曲輪かふぇ 橙
11/5(月)金沢・もっきりや
11/6(火)福井・福井/RagTime Classics
11/7(水)砺波・砺波美術館
11/8(金)福島・ミンガス
11/9(土)水戸・B2
http://www.kengonakamura.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年10月11日 12:06

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 佐藤英輔