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インタビュー

サクライ助手

被り物界を揺るがす女傑ピアニストが颯爽と登場

〈変り種オブ・ジ・イヤー〉は彼女で決まりだろう。2012年の年の瀬に、『初面-women-』なる秀逸な題を持つアルバムを携えて突如現れたお面系女性ピアニスト。その人の名は、サクライ助手。年齢不詳。8ビット・サウンドと絡むゲーム・ミュージックのカヴァーやスウィンギーなジャズ・ピアノ・ナンバーなどが並ぶこのデビュー作に、〈被り物界に、新たな刺客がまた一人〉というコメントを寄せているのは、鬼才・サカモト教授。ニコニコ動画やUstremeでおなじみ、被り物界の風雲児である彼がプロデュースを担当していると聞けば、なるほど!って納得される方も多いだろう。

「もともと引っ込み思案なんですね、こう見えても。そのくせ目立ちたがり屋というややこしい性格でして。顔は出したくないけど、音楽は聴いて欲しい。その結果がコレです」

座右の銘は〈疑心暗鬼〉。感情を表現すること、人に褒められるのが大の苦手で、お面を付けていようが取っていようが謎めいた雰囲気は変わらず。名前選びにおいて〈婦人〉〈如来〉など候補があったなかで、もっとも位の低そうな〈助手〉を選んでしまうセンスもそうだが、筋金入りの控えめな性格の持ち主。そんな彼女だが、ひとたびピアノに向かえばめっぽうハツラツとした演奏を繰り広げ、実に表情豊かな音色を紡ぎ出す。

「ピアノは寝ながらだって弾けるからいい」と笑う彼女。ジャズに開眼したことでアドリブの楽しさ、カッコよさを知り、それ以後は既成の枠にとらわれることが煩わしくてしょうがなくなったそう。自身の演奏を「勢いしか取り柄がないんで」と自嘲気味に話していたけど、荒ぶる気持ちを叩きつけてみせた《Giant Wheel》、サカモト教授(実は、彼女は大学時代から憧れていた先輩だそう)との連弾による《Silver Cord》などを聴けば、助手とか名乗りつつもピアニストとしては女傑だと分かるだろう。とにかく見た目と音楽のギャップがアルバムの面白さを形作っていることは確かだ。

ゲーム音楽好きや、お洒落ピアノ・インスト好きにも訴求できる魅力を持った『初面-women-』。彼女は本作を「支離滅裂」と評していたが、無秩序な感じをいっそう際立たせられたら、画期的なものが完成しそうな気もする。それから、「ゆくゆくはオーケストラをやってみたい」と理想を口にしていたけど、お面の彼女がそのなかにいるのを想像すると何だか楽しい。その前に、いきなり海外で人気に火がついちゃったりして。ありうるな。

LIVE  INFORMATION

『サカモト教授の GAME MUSIC BAR in Tokyo』
○12/15(土)ゲスト出演決定!
会場:TOKYO CULTURE CULTURE

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年12月10日 19:30

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文 桑原シロー