インタビュー

noon

ナチュラルな歌声が映えまくる初のボサノヴァ・アルバム

言われてみれば確かになかったnoonのボサノヴァ・アルバム。彼女のブラジル音楽への取り組みは諸作においてさまざまに行われてきたが、1枚丸ごとボサノヴァで行くというテーマを掲げた『Natural』は、リラクシンなスロウ・ジャズの代表的シンガーのどんな部分を映し出す結果となったのか。プロデューサーは村田陽一、そしてバックには中村善郎など優れた技量の持ち主たち。きっと相当の気合を必要としたに違いない。

「これまで作ってきたジャジーなボサノヴァから一歩踏み込んで、真ん中のものを作ろうって気持ちがあったんですけど、すぐに不安に駆られて。これまでいろいろ聴いてきていたから簡単にできるだろうという考えがバカだったな、と反省しました。でも周りに、いつもどおりでいいんだよって言ってもらえて、その結果、ありのままの自分で向かうことができた。私にとってこのアルバムは、最初の一歩という実感があるんですよ」

ボサノヴァを熟知したプレイヤーたちの懐の大きな演奏と交わりながら、彼女はありのままでいることの大切さを改めて悟った。そこで見つけた感覚を率直に言葉で表してみたのがこの表題というわけだ。それにしても、これまでになく〈挑戦する〉という意識を強く持って臨んだ作品に、自身の歌声の性質にもっとも似合う形容詞がピタッとハマったというのも何だか感慨深いものが。とにかくnoonによるボサノヴァ作品の登場を期待していた多くの人にとって〈ありのまま〉を大切にする彼女の魅力を再発見する機会になるはず。

このレコーディングをつうじてボサノヴァのツボを知ることとなり、感激しっぱなしだったという彼女は、「自分のひよっこぶりを痛感させられたんですね。歌手としても人間としても、日々少しずつでも成長していかなければ、なんて感覚が芽生えたのは初めてですね」と話す。とにかくたくさんの新鮮な喜びを得たようだが、その辺は本作を包む明るいムードとなって表れているだろう。

「全体的に爽やかでカラッとしたものにしたかったし、ポップなものになればいいなと思って」作ったという『Natural』だが、今回得た手応えは、早くも第2弾作品へと気持ちを向かわせている模様で「次はしらじらと夜が明けていく世界を描くのもいいかも」とのこと。ところで本作に入っているイヴァン・リンスの《アカーゾ》のカヴァーがしっとりとした滑らかさがあって絶品なのだが、次はMPB系の名曲集なんてのもいいんじゃない?

LIVE  INFORMATION
『noon tour ~Natural~ 2012/2013』

12/27(木)熊本/ぺいあのPLUS
12/28(金)長崎/Ohana Cafe
1/10(木)東京/STB 139
1/11(金)愛知/NAGOYA Blue Note
1/30(水)大阪/Billboard Live Osaka
1/31(木)広島/LiveJuke
2/1(金)福岡/Gate's 7and more...

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年12月20日 12:30

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文 桑原シロー