インタビュー

幸田浩子

ずっと望んでいたウィーン作品が理想的なかたちで実現

2年振りの新作は本場ウィーンの薫りに満ちたオペレッタ&ワルツ集。しかも、かつて彼女が専属期間を含めて3年間活躍した名門ウィーン・フォルクスオーパーのオーケストラとの録音盤だ。

「最初の一音が鳴った瞬間から、やわらかい光のような、きらびやかだけど時にメランコリックで情熱的だったりする、何とも云えないウィーンらしさが演奏から溢れ出てくるみたいでした。街角を曲がったら今でもモーツァルトやシューベルトにばったり出会えそうな、音楽に愛された街が持つあの雰囲気、重厚な建物とゆったり流れる時間、木々の緑や季節の花の匂い…現地でそんなものに包まれた幸福感をかみしめながら歌いました」

『メリー・ウィドウ』や『こうもり』のアリア、ワルツ《春の声》や《美しく青きドナウ》と、定番曲も見事だが、日本では上演機会の少ない作品でも、魅惑のオペレッタの世界にグイグイと誘なってくれる。

「オーケストラの人はどの作品も熟知していて、例えば《私は郵便配達のクリステル》ではちょっぴり田舎っぽいかんじとか馬車のリズム感が絶妙に醸し出され、配達人が来たことを知らせるホルンの音を入れてくれたりするアイデアも的確。《私の愛の歌はワルツでなければ》の演奏からは、舞台であるザルツブルク郊外・ヴォルフガング湖畔に建つホテル〈白馬亭〉のシーンが目に浮かぶようです。私も《シーヴェリングのリラの花》では、実際に訪れたことのあるシーヴェリングの懐かしい風景を思い出しながら歌いました。唯一、オスカー・シュトラウスの《扉を開けて》だけは、現在『ワルツの夢』の上演ではカットされる部分で、本場の皆さんでもあまり馴染みがないものだったようですが、楽譜を持っていて、とても素敵な曲だと思っていたので、収録できて嬉しかったです」

2013年2月には二期会創立60周年記念公演として、大植英次の指揮で『こうもり』にアデーレ役で出演することも決まっている。

「アデーレは学生時代から得意なレパートリーで今まで何度となく歌ってきましたが、実際に舞台の上で演じるのは、実は初めて!  機転が利いてヴァイタリティいっぱいの性格でとてもチャーミングな彼女のキャラクターが大好きなので、今から楽しみです。今回日本語での上演なのもワクワクします。たくさんの方に、オペラやオペレッタをもっと身近な物として楽しんでいただけるように、これからも頑張りたいと思います」

©原田京子

LIVE  INFORMATION
『オペレッタ(喜歌劇)こうもり(全3幕)〈新制作〉』
2/20(水) 21(木)18:30開演、23(土)24(日)14:00開演
会場:東京文化会館大ホール
大植英次(指揮)白井晃(演出)
出演:幸田浩子(アデーレ)ほか、二期会合唱団、東京都交響楽団

http://www.t-bunka.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年01月11日 12:51

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文 東端哲也