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インタビュー

INTERVIEW(3)――剛速球、投げますよ



剛速球、投げますよ



――このアルバムの曲って、“賽の河原”とか“警醒”にしても、曲中でテンポも変わるし、緩急のダイナミクスがすごくありますよね。その意味合いってすごく大きい気がするんですよ。特にライヴを観ていて、1曲1曲、一辺倒じゃない上りつめていくような感覚があるというか。

「基本的にレコーディングするために曲を作ってるわけじゃなくて、ライヴをやるために作ってるんで。逆に自分たちとしてはレコーディングが難しいんですよ。勢いがあれば勢いでライヴができるし、繊細に感じる日はそういうこともできるんだけど、レコーディングで録ると、やっぱりみんなかしこまってしまうし。かといって、無鉄砲に〈うわー!〉って大きな音を鳴らせばいいかと言えば、そうでもないし、ライヴ・レコーディングすれば同じのが録れるかっていうとそうじゃない。そこもやっぱり全員で探っていくしかなくて。でも、今回はたぶんいままででいちばんライヴに近いとは思いますね。俺らにとってはそうです」

――そのライヴ感というのは、まさにその通りだと思います。今回の作品もそうですし、あと実際にBRAHMANのステージを観ると、そこに全力をかけているというのがちゃんとわかるし、だから説得力があると僕は思うんです。4人で音を合わせるにしても、本気で合わせてる感じがあるというか。

「まぁ、練習すれば、リズムとかメロディーとか、ある程度上手な人だったら合うと思うんですよね。でも俺たちが合わせたいのはもっと違うところなんですよ。だからいっしょに生きてるんだと思うし、それが宿命なのか運命なのかわからないんですけど、こんなに長い間やれてるんだと思う。リズムが合うとか演奏が合うっていうことが、もっと本当の意味で息が合うとか、道が合ってくるみたいな意味になりたいなとは思う」

――音楽だけの話じゃないですよね。

「だから、4人で支援活動とかできたのはすごい大きかったなと思う。バンドなんかは男4人いればいろんな考え方があるんで、もともとひとりでやろうと思っていたから。俺は楽器を持たないフロントマンだし、どうしても俺の露出は多いけど、やっぱりバンドやってて良かったなって本気で思ったっていうか。どんだけそれが自分の支えになって、ケツを叩くものになったかを感じて。やっぱり、お恥ずかしいですけど、バンドがいいなって思った(笑)。俺は別に歌手になりたいわけでもないし、シンガー・ソングライターになりたいわけでもないし、バンドで有名になったらソロになりたいわけじゃないし。〈俺バンドマンになりてえ、やっぱり〉って思って。で、このバンドがやっぱりいいなって思えた。だからそういう意味で生きてる道筋が合ってくるんであれば、それは嬉しいですよね。それを感じてもらえるんだったら」

――まさにいま仰ったことが、ライヴを観てる人に説得力として伝わってる感じはします。

「ただ、演奏は合わんですよ。練習しても合わんのですわ、俺らは(笑)」

――あははは! でも、テクニックのあるスタジオ・ミュージシャンがあの曲を演奏して、上手い歌手の人が歌っても、あの感じは絶対出ないと思うので。

「出ないでしょうね。まあ、それは別に音楽だけじゃないですよ。すべての職業、すべての生き方、すべての人生でそうだと思う」

――そうですね。で、そういうことは、ちゃんと伝わると思います。ライヴで騒いで〈楽しかった〉でも、それはそれで全然いいけど。

「うん。ほら、自分がやっぱり音楽がなかったら生きていけないタイプだったから。音楽に救われたことが自分のなかで本当に多い。もう諦めてしまおうと思った時にそこにあったのは、もちろんそこに人もいてくれたけども、やっぱり自分自身で勝手に決めた、誰かの曲だったから。そういうのを聴きながら辛い時を乗り越えてきていて」

――なるほど。

「だから、みんなで楽しむってのももちろんいいんだけれども、ひとり、何より自分にグサッと刺さるものにしていきたいし。すべての人に平等にわかるような、全員が楽しいものじゃないなってすごく感じてるので。どんな受け止め方をされてもいいんだけど、でも、俺自身はどんな投げ方でもしますとは思ってない。〈剛速球、投げますよ〉っていう(笑)。当たりたくなかったら逃げてください、受け止めるなら正面で受け止めてください。じゃないとケガするよって」



願わないものは叶わない



――わかりました。最後にもうひとる、すごく印象的だったのが“空谷の跫音”という曲で。この曲って、祈りを感じるような楽曲だと思ったんですね。このタイミングで、そういう曲が生まれているのが興味深いと思いました。

「目に見えない距離にいる人が願ってくれてることとか、祈ってくれてることとか、そういうのって、俺はけっこう通じてるんじゃないかって思うことが多々あって。ソーシャルネットワークで繋がってるとか、そういうことだけじゃない、影響するものが本当にあるというか。こういうことを言うとロマンティックに聞こえるのかもしれないけど、俺は現実にあると思ってるんだよね。願わないものは叶わないし。気配とかって感じるでしょ? 俺、家の近くに神社があって、そこですごい感じるんですよ。で、俺はその本堂でお参りをずっとしないで、毎朝、そこの隣の狐さんの小さい祠みたいところでお参りをしてて。そしたら年末にそこがパワースポットだってTVで紹介されて。いつ行っても並んでるから、まだ初詣できてないんですけど(笑)」

――(笑)。

「2011年の3月から、毎日そこで手を合わせていて。そうすると、やっぱり考えることがあって。自分がそこで何を願うか、毎日変わっていってるんですけど。俺、最初は〈助けてください〉とか〈家族がとりあえず生きてますように〉とかだったんですよ。それがだんだん変わっていって、最終的に〈ありがとうございました〉になった」

――でも、それは正しいと思います。神社って願い事を言う場所じゃなくて、実は〈いま、こういうふうにやってます〉という報告と感謝をしにくる場所なんだって話を最近聞きました。

「うん。〈今日も一日ありがとうございました〉だけになってくるから、おもしれえもんだなって思うよね」






カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年02月13日 18:01

更新: 2013年02月13日 18:01

インタヴュー・文/柴 那典