小林香織
傍にいることの大切さを教えてくれたR&Bに感謝
新作のコンセプトは──との問いに「ズバリ、R&Bでやりたかった」という答えが返ってきた。2005年にアルバム・デビュー、8作目での新たな挑戦を、 「でも、私のライヴに来てくれている人なら、いつもやっていることから、さほど違和感なく聴いていただけるのではないでしょうか?」と語りはじめた小林香 織。前作『SEVENth』は初のセルフ・プロデュース。自ら「小林香織カタログみたい」と評するように、彼女の興味が広範囲にあることを物語る内容だっ た。だが、女性サックスプレイヤーとして注目を浴び続ける彼女の、いままでの立ち位置にR&Bの影は薄いと素直に伝えると、「“灯台下暗し”だったんで す」と笑った。
「いろんなことに挑戦したいのは確かです。挑戦するという気持ちになると燃えますから(笑)。でも、改めて自分の音楽的な興味の矛先を確認してみたら、iTunesにはR&Bしか入ってないじゃないですか! だったら、それをやればいいんじゃないか、って」
プライヴェートで聴く音楽の話になると、エリック・ベネイ、ミュージック・ソウルチャイルド、ミント・コンディション、R・ケリー、ケリー・プライスと いった名前が矢継ぎ早に出てきた。もちろん、好きで聴いていたからといって、すぐにR&Bプレイヤーに変身できるわけでもないが、「この8枚目がいちばん の“難産”だった」と言いながらも、「気を遣ってないように気を遣うことができた」と、仕上がりが満足のいくものであることを伝える。それはたとえば、 「ナチュラル・メイクのために2時間かける、みたいな(笑)」
さらに、R&Bシーンで注目される気鋭のトラックメイカー10人とのコラボも実現。
「最初は、私が女性プレイヤーということで、わりとラブリーなトラックを作ってくださった方が多かった(笑)。でも、私からのオーダーはもっとシンプル に、男らしいというかスッキリしたものを求めていた。ピンポンパンポンと、あんまりバックでいろいろ鳴っているのは嫌だって……(笑)。装飾が多いと、結 果的にサックスが沈んでしまうので、やっぱりバック・トラックはシンプルなほうがいいと、そんなニュアンスを伝えるようにしました」
新作の出来映えについて彼女は、「BGMとして傍において聴いてほしい」と表現した。
「BGMって、昔はとても嫌な言葉だと思っていた。でも、生活と音楽の関係を考えてみると、邪魔な音と一緒にいたくないですよね。空気のように、いちばん傍にいて大切なものになれたらいいなって、いまはそう思えるようになったんです」
LIVE INFORMATION
3/17(日) 西国分寺いずみホール
3/22(金)名古屋ブルーノート
3/23(土) 目黒ブルースアレイジャパン
3/28(木)ビルボードライブ大阪