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インタビュー

中島ノブユキ

『八重の桜』の名シーンを彩る独特の音色感覚

NHKの大河ドラマ『八重の桜』の音楽は、昭和の作曲家たちにつうじる坂本龍一による王道の路線をゆくメイン・テーマ曲はもちろんながら、親しみやすく、しかもさりげなく届くメロディ、この作曲家独特の音色感覚(バンドネオンの使用!)とドラマ中の中島ノブユキの音楽に、ふっと耳が吸いよせられる。現在ジェーン・バーキンのツアーで音楽監督としてヨーロッパをまわっている作曲家から、ドラマの音楽についての話を聞いた。

──アンサンブルの編成は?
「過去のソロ・アルバムのサウンドのおかげで今回のお話を頂いたと思っています。なので、アルバムでも多く用いたバンドネオン、ギター、小編成の弦楽アンサンブル、女声コーラス、そしてもちろんピアノといった室内楽的なサウンドにより、パーソナルな視点、感情、家族などを表しました。そして情景の雄大さ、行動力、歴史の抗えない動き、などは対比的にオーケストラを用い、さらに、室内楽とオーケストラサウンドを結びつける役割としてそのどちらの編成においても木管楽器(オーボエ、クラリネット)等でメロディを多く奏でるようにしました」

──曲調の書き分けは?
「単に悲しい場面の曲だから悲しい、たくましさを表すために勇壮に、ではなくて、むしろその反対の情感も感じさせるような曲作りを目指しました。そのことによって悲しみの先にある希望、たくましさの中にある悲壮感、といったモノを感じて頂けると嬉しいです」

──坂本氏のテーマ曲については?
「ドラマを俯瞰するような神の視点でもあり、またあらゆる感情を内包しながらも一つの太い幹を感じさせる素晴らしい曲です」

──メイン・テーマとの関連は?
「音楽の大半の作曲はかなり早い段階で作曲されているので、メインテーマからモティーフをわかりやすい形で運用する、というスタイルはとっていないけれども、実は対旋律や内声の動きの中にさりげなく坂本さんのメロディが聞こえてくるような工夫をしました」

──CDに収められている曲の選択は?
「第1回目の録音は去年の夏に行われましたがそのときは50曲近く。そこから20数曲に絞り、なかには会心の作と思っていても落とした楽曲があります。もしサントラのⅡが出るあかつきにはそうした曲も何曲か盛り込もうと」

──録音はあとどのくらい?
「年内にあと2回。ドラマが進むなか、新しい登場人物や人間関係、感情、歴史のうねりがあるのでそうしたことどもに寄り添う音楽を再び作りたいと思っています」

LIVE  INFORMATION
『Jane Birkin sings Serge Gaonsbourg "VIA JAPAN"』
3/28(木)18:30開場/19:00開演
出演: ジェーン・バーキン 中島ノブユキ(P) 金子飛鳥(vn) 坂口修一郎(tp, tb) 栗原務(ds)
会場:東京オペラシティコンサートホール
http://www.parco-art.com/janebirkin

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年03月04日 18:44

ソース: intoxicate vol.102(2013年2月20日発行号)

取材・文 小沼純一(音楽・文芸批評家/早稲田大学教授)