インタビュー

パスピエ “フィーバー”



天衣無縫な魅力がフィーバーする、バンドの熱量をパッケージしたファースト・シングル!!



パスピエ_A



80sニューウェイヴのテイストを現代的なサウンドへと昇華させた楽曲、そして、可愛さと鋭さを共存させたヴォーカルによって、敏感な耳を持つオーディエンスから高い支持を得てきたパスピエ。ファースト・アルバム『わたし開花したわ』(2011年)、セカンド・アルバム『ONOMIMONO』(2012年)が共にロングセールスを記録、配信サイトによる〈ニューアーティスト2013〉に選ばれ、山下智久のニュー・シングル“怪・セラ・セラ”を手掛ける(!)など、さらなるブレイクの兆しがはっきりと感じられるこのタイミングで初のシングル作品“フィーバー”が届けられた。そのなかでも表題曲は、彼らの卓越した演奏テクニック、生々しいライヴ感がダイレクトに伝わってくる楽曲に仕上がっている。

「いままでは曲を完成させることにエネルギーを注いでたんですけど、いろんなところでライヴをさせてもらうようになったこともあって、そこ(ライヴ)を見据えた曲を作ってみたくなったんですよね。音楽的にも新しいヴェクトルでやってみたかったというか、バンドの熱量をそのままパッケージするのもいいじゃないかっていう欲求もあったし。実際、これまでの作品に比べるとダビングの数もだいぶ減ってるんですよ」(成田ハネダ、キーボード)。

「この曲をライヴでやるときは、私もかなり踊ってます(笑)。私が動いたり踊ったりすることで、メンバーもお客さんも自分自身も良い気分になれたらいいなと思って。お客さんとの距離もだいぶ縮まってきたんじゃないかな。〈分かち合う〉みたいなところまで行きたいです。楽しみ」(大胡田なつき、ヴォーカル)。

大胡田の歌詞も冴えまくり。楽曲が持っている熱量を〈フライデイナイトくらいはフィーバーしたっていいじゃん〉という超キャッチーなフレーズで表現し、同時に〈抑圧された日常〉も感じさせてくれる。彼女の言葉のセンスはやはり、パスピエの大きな魅力だと思う。

「週末にはじけるというより、〈ふだんは縛られてる〉とか〈抑えつけられてる〉という目線から書いてたんですけどね。それがつらいっていうわけではないんですよ。例えば、2色だけで絵を描くとか、ちょっとした縛りがあるから生まれる表現も、感じられることもあると思うので」(大胡田)。

カップリングには〈パスピエ流の王道ロック・バラード〉とも言える“マグネティック”、さらに80年代ニューウェイヴの隠れた名曲“Eccentric Person Come Back To Me”(大野方栄)のカヴァー、自主制作盤『ブンシンノジュツ』(2010年)に収録されていた“アンドロメダ”のリメイク・ヴァージョンを収録。新しいパスピエを感じさせつつ、みずからのルーツもしっかりと提示することに成功している。

「“フィーバー”“マグネティック”に関しては、いままでパスピエにあまり興味を持ってなかった人にも聴いてほしいという気持ちもあったんですよね。もちろんこれまでの作品とリンクする部分も欲しかったから、カヴァーやリメイクも収録して。シングルが出来たときは一瞬、もしかしたら振り切りすぎちゃたかなって思ったんですけど(笑)、自信を持って届けられる作品になったんじゃないかな、と」(成田)。

シングル発表後の4月には自主企画イヴェント〈印象A〉が東京と大阪で開催される。FRONTIER BACKYARDにThe SALOVERS(4月2日・渋谷WWW)という対バンも、こちらの予想を気持ち良く裏切る新たな顔ぶれと言えるだろう。

「The SALOVERSは王道のロックンロール・バンドだし、FRONTIER BACKYARDはまさにライヴ・バンド。彼らに負けないようなライヴをしたいと思うし、それがいままでのパスピエのイメージを払拭することにもつながるんじゃないかな、と。能動的にやっていきたいんですよね、いまは」(成田)。

「シングルを出すのも初めてだし、自主イヴェントも初めて。今年は〈初〉が付くことばかりです」(大胡田)。

独自のポップ・サウンドをさらに進化させつつ、しなやかな肉体性を備えたロック・バンドとしての存在感も発揮し始めたパスピエ。現在制作中というニュー・アルバムを含めて、このバンドの魅力はさらに幅広い層へと浸透していくことになりそうだ。



▼関連盤を紹介

左から、パスピエの2011年作『わたし開花したわ』、2012年作『ONOMIMONO』(共にunBORDE)、山下智久のニュー・シングル“怪・セラ・セラ”(ワーナー)、大野方栄の“Eccentric Person Come Back To Me”を収めたコンピ『テクノマジック歌謡曲』(ソニー)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年04月18日 18:40

更新: 2013年04月18日 18:40

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

インタヴュー・文/森 朋之