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インタビュー

INTERVIEW(2)——音楽で何を伝えるか



音楽で何を伝えるか



EGO-WRAPPIN'



――その意味で今回のアルバムは1曲目から震災以降の作品であることをはっきりと伝えている作品だと思うんですが、震災以降、ご自分のなかでどんな変化がありましたか?

中納「震災に恐怖を感じた私は一時的に実家へ帰ったんですけど、そこで思ったのは〈私だけ助かっても、みんながいっしょじゃなければ、意味ないな〉ってことだったんですね。そう思った時に人の繋がりの大切さが身に沁みたし、物やお金もたいした意味はないなって。それから震災後にさまざまな意見が巻き起こるなかで私も原発に対して思うことがあったんですけど、そういう節目にあって、それぞれの事情で長らく肯定してきた意見を変えられない人がいたりもする。自分にとっては、そういう世の中を音楽で革命的に変えることの難しさを実感したり、音楽で何を伝えるか、どう伝えるのかということについて、改めて考えさせられましたね」

――中納さんがラップを披露している4曲目の“10万年後の君へ”は、それと明示しているわけではありませんけど、処理に途方もない年月を要する放射性廃棄物について歌われているようにも受け取れました。

中納「そうですね。『100,000年後の安全』という映画に触発されて書いたんですよね。フィンランドのとある島の地下深くに埋めた放射性廃棄物を10万年かけて無害化するんですけど、その危険性をどうやって後生の人に伝えるかといったら、絵文字なんですよね。しかも、そういう危険性のあるものが地球上にいっぱいあるわけでしょ。ホンマどうするのかなって思ったことがこの曲のきっかけになったんです」

――5曲目の“on You”でも、混迷の時代にあっても音楽の力を信じるというひたむきなメッセージが歌われていますし、今回の歌詞はいままで以上にダイレクトな表現があちこちに見受けられます。

中納「そうですね。いままで何も知らずのほほんと生きてきた自分がアカンなって思ったし、思っていることを歌で伝えることができるのは私の強みやと思っているから」

——片や、“水中の光”が出来たことで森くんが見い出した新作の方向性というのは?

「自分のなかで“水中の光”は歌詞がダイレクトに入ってくる印象があったり、音楽的にはよっちゃん一人で成立してる曲だと思ったので、歌詞や歌にいかに寄り添うかという作品のテーマが思い浮かんだんです」

中納「そのうえで、私らはこれまでEGO-WRAPPIN'としてずっと音楽を作ってきたので、新しいやり方にチャレンジすることで曲作りに新鮮味が欲しかったりもして、今回は森くんがドラムを叩いたり、ベースを弾いたり、私がシンセを弾いたりしたんですね。そういういままでとは違うやり方、頭の使い方をすることで、曲作りにおいて新しい発見があったりしましたね」

森「とはいえ、奇を衒ったこと、難しいことをやったつもりはないんですよ。“FUTURE”で僕がドラムを叩いたり、“10万年後の君へ”でベースを弾いたのも、よっちゃんがベースラインを考えたり、シンセを弾いたのも、あくまで自分たちができる範囲内のことをやっただけ。曲を形にするうえで自分たちでやったほうが手っ取り早かったのは確かですし、そうしたセッションは〈ドラムから生まれる曲って、どんな感じなんやろ?〉っていうような、ちょっとした発想からなんとなく始まる感じで、お互い演奏したフレーズにもう一人が乗っかってきて、〈あ、いまのフレーズいいやん〉ってところを活かして、その先をさらに作っていったんですね。そうした作業から結果的にいままでとは違ったタイプの曲が生まれたんですよ」


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掲載: 2013年04月10日 18:01

更新: 2013年04月10日 18:01

インタヴュー・文/小野田雄