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インタビュー

fox capture plan 『trinity』



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キツネ捕獲計画、発動中──とある事件を伝えるドキュメンタリーを見ていたリーダー、岸本亮の思いつきで、〈前人未到の音楽を捕まえる〉という意味を込めて命名されたfox capture plan。ジャズ・トリオの形態を取りながらポスト・ロックの要素も併せ持った独創的なサウンドがライヴで話題を呼び、昨年秋に発表されたミニ・アルバム『FLEXIBLE』も高評価を獲得。そしてこのたび、ファースト・フル・アルバム『trinity』において、その音楽の全貌がさらにあきらかになる時が来た。

「やりたい音のイメージとしては、E.S.T.やバッド・プラスのようなサウンドがありましたね。コンテンポラリー・ジャズにはポスト・ロック的な要素がもともとあると思っていたし、ブラッド・メルドーがレディオヘッドをカヴァーしたり、バッド・プラスがエイフェックス・ツインをカヴァーしたり、そういうのもヒントになってます。ジャズは広いジャンルだし、ポスト・ロックも広いし、その2つを掛け合わせた音楽をやりたいというのが、最初に大きなコンセプトとしてありました」(岸本)。

JABBERLOOPのキーボーディストとしても活躍する岸本を中心に、Immigrant's Bossa Bandのカワイヒデヒロ、そしてnhhmbaseやdirection of the chordで活動する井上司という異色のトリオ。ジャズ畑の岸本とカワイ、ロック畑の井上という組み合わせはそのままバンドのコンセプトに繋がり、3人が自由に音楽性をぶつけ合えばすなわちクロスオーヴァーな音楽が生まれるという、理想的なトライアングルだ。

「いままでずっとロックをやってきたんですけど、いちばん気楽にできたレコーディングでしたね。ドラムから始まる4曲目の“Exceed the Limit”とか、めちゃくちゃ緊張感あるんですけど、自分の気持ち的にはユルいんですよ。いい意味で」(井上)。

「楽曲だけ聴いたら、〈このバンドの人たちは相当変わっててストイックな性格なんだろうな〉とか思われるかもしれないけど、まったくそんなことない(笑)」(カワイ)。

3人が口を揃えて〈楽しかった!〉と振り返る今作では、前作で示したバンド・コンセプトをさらに拡大。バラードあり、変拍子あり、ドラムンベースあり、ギターと女声を加えた曲ありと、幅広い曲調で無限のインスピレーションをリスナーに与えてくれる。もしもインストということだけでスルーするような人がいるならば、それは本当にもったいない。彼らの曲のほとんどは3〜5分に統一され、ジャズの素養から生み出された美しいメロディーとロックの昂揚感溢れるリズムを持った、コンパクトなポップ・チューンとして楽しめるものだ。

「自分がほかでやってるバンドのお客さんも、最初はスルーしてたんですよ。でも、実際にライヴを観たりCDを聴いたら想像と全然違ったみたいで、ポップさをすごく気に入ってくれて、ジャズを聴かない人も聴いてくれるようになったんですよね」(井上)。

「クラブ系のオシャレな音楽を聴いてる人も、オルタナティヴで実験的な音楽が好きな人も、野外フェスに出るようなジャム・バンドが好きな人も、どういう人にも〈かする〉ような音楽じゃないかな?と思うんですよね。時代も時代だし、そのへんは自然と意識してるところがあると思います」(岸本)。

「あと、ゲーム音楽が好きな人とかもね」(カワイ)。

前作ではビョーク“Hyperballad”を演奏していたが、今回はオアシス“Wonderwall”のメロディアスなカヴァーが絶品だ。こうした親しみやすい誘いに乗って彼らの音楽へと入り込めば、その奥にはジャンルを超えた新たな世界が広がっている。いまこれを読んでいるあなたも、fox capture planが企てた計画通り、捕獲されてしまう可能性は大いにあり得る。

「ピアノ、ベース、ドラムはいろんな音楽に入ってる音だから、何でもできちゃうんですね。この編成だからこそできる幅広さを、これからもっと追求して行こうと思います」(岸本)。



PROFILE/fox capture plan


ワールドワイドな活動を展開しているクラブ・ジャズ・バンド、JABBERLOOPのキーボーディストとしても活躍する岸本亮(ピアノ)、Immigrant's Bossa Bandのカワイヒデヒロ(ベース)、nhnbaseやdirection of the chordで活動する井上司(ドラムス)の3人によって2011年に結成。数は少ないながらも着実にライヴでの評判を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで流通された4曲入りのCD-R『Sampleboard』が好セールスを記録する。同年10月にタワーレコード限定でリリースされた7曲入りのミニ・アルバム『FLEXIBLE』も高い評価を獲得。ファースト・フル・アルバム『trinity』(PLAYWRIGHT)をタワーレコード先行でリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年05月01日 15:00

更新: 2013年05月01日 15:00

ソース: bounce 354号(2013年4月25日発行)

インタヴュー・文/宮本英夫