インタビュー

スヌープの越境史を簡単に振り返ると……

 

『Tha Blue Carpet Treatment』収録の“Get A Light”にダミアン・マーリーを迎えてはいたスヌープ。今回のプロジェクトを結んだディプロとは“That Tree”のプロデューサーに迎えて以来の縁となるが、その頃から越境という意味で彼の挑戦は始まっていた。ここではさまざまなフィールドに跨がるコラボ例として近年のディスクを紹介しているが、この並びからもわかるように、ライオン化にはビックリするとしても、スヌープが興味の赴くままに越境する行為自体は何ら不思議ではなさそうだ。

▼スヌープ・ドッグの作品。

左から、2006年作『Tha Blue Carpet Treatment』(Doggystyle/Geffen)、2009年作『More Malice』(Doggystyle/Priority/Capitol)

 

SNOOP DOGG 『Ego Trippin'』 Doggystyle /Geffen(2008)

加工ヴォイスで歌いまくる先行シングル“Sexual Eruption”がハウス方面でも支持を得た転機の一作。他にもタイムのカヴァー“Cool”での80sファンク趣味や、エヴァーラストを迎えたジョニー・キャッシュへのオマージュなど、以降の多彩な越境を予見するような内容だ。

 

KATY PERRY 『Teenage Dream』 Capitol(2010)

この年にはジェシカ・モーボイやビッグ・タイム・ラッシュらポップ・アイドルとの共演が続いたが、極めつけは本作収録の全米1位曲“California Gurls”だろう。ジェイ・Zとアリシアのアレに触発されたというカリフォルニア讃歌だけに、スヌープの観光ラップにも気合いが入る。

 

ROBYN 『Body Talk Pt.2』 Konichiwa/Label(2010)

80sエレポップのようなスピード感がかっこいい“U Should Know Better”をニガラッチ名義でクラス・アーランドと共同プロデュース。ラップでも客演しており、こんにチワワmeets猛犬な感じが楽しい。なお、別曲をディプロが手掛けているというニアミスも。

 

SNOOP DOGG 『Doggumentary』 Doggystyle /Priority/Capitol(2011)

内容の取っ散らかり具合がピークを極めた、スヌープ・ドッグとしての現時点での最新作。サンダーキャットらの演奏するPな冒頭曲から、ウィリー・ネルソンとの“Superman”、ゴリラズ制作の“Sumthin Like This Night”など、興味のままに引き出しを開けまくり。

 

DAVID GUETTA 『Nothing But The Beat』 Virgin(2011)

上掲作に収録の“Wet”をゲッタがリミックスした“Sweat”を収録。原曲もファー・イースト・ムーヴメント繋がりでキャタラクスが手掛けた電化曲だったが、ダンサブルにビルドアップする売れっ子らしい手捌きも好作用してユーロ圏で大ヒット、全仏1位をゲッタした。

 

BOB SINCLAR 『Disco Clash』 Ultra(2012)

この手の大物DJとの共演も不思議ではなくなってきた頃のビッグな合体。スヌープが参加したのはバッキバキのトランシーなハウス“Wild Thing”で、語り口はトーン・ロックによる同名の西海岸クラシックをリメイクしたような雰囲気。地縁も感じさせる興味深いコラボだ。

 

WILLIE NELSON 『Heroes』 Legacy(2012)

自作での“Superman”コラボの返礼として、ストレートなカントリー・ナンバー“Roll Me Up And Smoke Me When I Die”にシンガーとして客演! 巻くのが大好きなオリジナル放蕩野郎に見守られながら、フワフワした鼻歌っぽい味わいで押し切っているのがいい湯加減。

 

BOYS NOIZE 『Out Of The Black』 Boysnoize(2012)

以前“Sexual Eruption”をリミックスしたこともあるボーイズ・ノイズに乞われて、ブリーピーな電子音が縦貫するエッジーな“Got It”に悠々と客演。ここには未収となったがジャングル・ブラザーズのヒップ・ハウス・カヴァー“I'll House You”でもコラボしている。

 

『Snoop Dogg Presents Dubstep LA』 Dundridge(2013)

チェイス&ステイタスをジャックした“Snoop Dogg Millionaire”(2009年)でダブステップに挑んだ延長で、これはロンドン勢と手を組んだ2011年のミックステープ収録曲をセパレートで並べたもの。DPGの仲間や舎弟たちも従えて、嗅覚の鋭いところを見せている。

 

TIMATI 『Swagg』 ビクター(2013)

ジョン・ロック“Saint-Tropez”などユーロ圏のダンス曲に客演する機会も多いスヌープ。こちらはそのサントロペを拠点とするロシアン・ラッパーの日本編集盤で、2009年の“Groove On”はここで聴くのが早い。ファンだった世代が各国で台頭してくる様子を見ると今後の活動も安泰のはず。

 

【公開情報】映画「スヌープ・ドッグ/ロード・トゥ・ライオン」は7月27日(土)より渋谷シネマライズ他にて全国公開! 詳細→〈www.kadokawa-sound.jp/snoop-lion/

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年05月08日 18:00

更新: 2013年05月08日 18:00

ソース: bounce 354号(2013年4月25日発行)

ディスクガイド/出嶌孝次

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