KANA-BOON 『僕がCDを出したら』
キャッチーなメロディーとソングライターの〈少年性〉を武器とする、日本のギター・ロック・シーンで純粋培養された新鋭の登場!
「僕は中3からギターを始めたんですが、ギターを手にしたあの日から〈音楽で飯を食う〉というのは心の真ん中にずっとあります。聴いて育った、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKEN、ELLEGARDENみたいに、〈シーンを牽引するいちばんのバンドになるんだ!〉とずっと思っています」(谷口鮪、ヴォーカル/ギター:以下同)。
このたび初のミニ・アルバム『僕がCDを出したら』を完成させたKANA-BOONの中心人物である谷口の夢は、少しずつ現実のものとなりつつある。たまたま友達から聴かされたマキシマム ザ ホルモンの“ロッキンポ殺し”に衝撃を受けてロック少年になったという谷口は、高校入学と同時にKANA-BOONを結成し、2011年には現在のメンバーに。大阪・堺を拠点に活動し、すでに〈MINAMI WHEEL〉には3年連続出場、昨年は〈キューン 20 イヤーズオーディション〉で見事グランプリを獲得し、憧れのアジカンのライヴでオープニング・アクトを務めている。
「アジカンは、僕のなかでずっと変わらずいちばんのロック・バンドです。いつだって道標になってくれました。アジカンがいなかったらいままでやってこれなかったし、僕も曲なんて作れなかったと思いますね。何にも替えられない存在です」。
今作に収録された6曲は、どれも日本のギター・ロック・シーンで純粋培養されたものと言っていいだろう。アジカンやバンプはもちろん、例えば、最近のブレイク組であるクリープハイプのニュアンスも入っているあたり、まさにシーンの申し子といった印象を受ける。すでにYouTubeでの再生回数が10万回を超えている現時点での代表曲“ないものねだり”をはじめ、ハンドクラップやヘヴィーなギター・ソロがライヴ映えすること間違いなしの“クローン”など、ユニークな楽器の絡みや疾走感のあるリズムといった基本マナーはどの曲でもしっかり押さえられているが、彼らのいちばんの武器はとにかくキャッチーなメロディーだろう。そこに関しては、谷口自身もしっかり自覚しているようだ。
「キャッチーなものって浪費されがちだと思うけれど、でも世に残ったり心に残ったりするのって歌のメロディーだと思うので、そこがいちばん大事です」。
彼らの音楽についてキーワードをひとつ挙げるとすれば、それは〈少年性〉ではないかと思う。谷口の伸びやかな歌声や遊び心たっぷりのアレンジ、〈なかなか心を通い合わせることのできない君と僕〉を描いた歌詞など、まだ20代前半である彼らの等身大の姿が偽りなく落とし込まれることで、楽曲の瑞々しさが生まれている。
「それはたぶん僕が大人になりきれてないのと、夢をずっと忘れてないからだと思います。大人になりたい自分と少年でいたい自分のバランスが、自然と上手く取れてるような気はします。僕もなんですけど、メンバー全員めちゃくちゃ子供なんですよ。いまだにTVゲームひとつで白熱するので(笑)」。
『僕がCDを出したら』という表題は、爽やかな感動を呼ぶパワー・ポップ・チューン“眠れぬ森の君のため”の歌詞から取られているのだが、これも少年の夢をストレートに表現したタイトルだと言っていいだろう。中3で心に決めた谷口の夢が、いまも変わることなくバンドを動かし続けているのだ。
「今年はフェスに出まくりたいですね。〈若手!〉〈新人!〉っていう枠内にKANA-BOONをしっかり当てはめたい。行ったことのない土地にもたくさん行きたいです。待ってくれてる人たちに会いに行きたい。大きな目標は、いちばんになること。6年前からずっと頭のなかに描いてる、いちばんのロック・バンドになることです」。
▼関連盤を紹介。
左から、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの2012年作『ランドマーク』(キューン)、BUMP OF CHECKENの2010年作『COSMONAUT』(トイズファクトリー)、ELLEGARDENの2006年作『ELEVEN FIRE CRACKERS』(Dynamord)
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掲載: 2013年05月21日 14:05
更新: 2013年05月21日 14:05
ソース: bounce 354号(2013年4月25日発行)
インタヴュー・文/金子厚武