こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

POEMA 『Poema』



Poema_A



このたび本邦デビューを飾ったばかりの、シェリーンとエルのパケット姉妹から成るポップ・デュオ、ポエマ。ニューメキシコ州はアルバカーキ出身の彼女たちが、こうして日本で正式に紹介されることを待ち望んでいたファンは、実は少なくない。きっかけは2010年のファーストEP『Sing It Now』だった。ここでの爽やかなアコースティック・サウンドと、若干のメランコリーを孕んだ美しいハーモニーが口コミで評判を呼び、輸入盤のみのリリースにもかかわらずロング・ヒットを記録。それが今回の日本進出への助走となる。

少しだけ話を遡ろう。ミュージシャンだった父親の勧めで、姉のシェリーンは8歳の時から、妹のエルは9歳の時から本格的に音楽の勉強をスタート。やがて好きな曲をカヴァーし、それをネット上にアップするようになる。

「良いコメントが自信に繋がっていったわ。その時代のネット・ユーザーはみんな優しかったんだもの。いまのユーザーはヒドイわね。最近はインターネットをしないのがいちばんよ」(エル:以下同)。

とはいえ、カヴァーはあくまでお遊び程度。プロのミュージシャンをめざすつもりはなかったようだ。しかし、ある慈善ライヴで披露したオリジナル曲に対し、オーディエンスから予想以上の好反応があったため、デュオとして本格的に活動することを決意する。ユニット名は、たまたま見つけた単語の響きに魅了され、ポエマとした。それが2008年のこと。

「最初は〈ポエマ……何か良い響きの単語ね!〉という感じだったの。ギリシャ語で〈美しい作品〉という意味だと知ったのは後のことよ。ギリシャ語での発音は〈ポイマ〉なんだけど、私たちは〈ポエマ〉と読むことにしたわ。私たちの目標は美しい作品を作ることだったし、これって素晴らしい偶然だと思わない!?」。

今回リリースされた『Poema』は日本独自の企画盤。2012年発表のファースト・アルバム『Remembering You』をベースに、『Sing It Now』収録曲や未発表音源から編まれている。冒頭を飾る“2AM”をはじめ、ここには胸躍るポップ・ナンバーが満載。名うてのセッション・プレーヤーとレコーディングしたトラックの数々は、アコースティック・ギター&ピアノのナチュラルな音色と2人のハーモニーの魅力を存分にアピールしながら、曲ごとにさりげなく趣向を変え、聴き手を飽きさせない。例えば、フュージョンっぽい雰囲気を漂わせた“Won't Say I'm Sorry”、キラキラと鳴るエレクトリック・ギターをフィーチャーしたギター・ポップ調の“Falling”など。なかでも、バンジョーやマンドリンを使ったカントリー・テイストの“Would You”や“Your Song”あたりは、パッツィ・クライン、ミランダ・ランバート、ニッケル・クリークらをフェイヴァリットに挙げる彼女たちの〈らしさ〉がよく表れた逸品と言えよう。

また、「15歳の女子高生の視点から見た〈完璧な男の子〉について歌ったのよ」と語る初期の代表曲“Boys & Bugs”が、『Poema』に収録された意味は大きい。アレンジやメロディー展開は確かに発展途上と言えるが、その演奏から溢れる、音楽を作ることへの喜びやガーリーな魅力は多くのリスナーを虜にするはずだ。

ちなみに、「“Boys & Bugs”の続編は“Muscle & Money”かしら」と笑いながらコメントする2人。天真爛漫な少女期を経て、彼女たちはいまゆっくりと大人の階段を登っている。現在22歳と20歳。今後よりいっそう演奏スキルや表現力を高め、活動の場を広げていくだろうポエマの足跡を、ぜひこの機会に振り返ってみては!?



PROFILE/ポエマ


シェリーン・パケット(ヴォーカル/ピアノ)とエル・パケット(ギター/ピアノ)によるニューメキシコの姉妹デュオ。ギタリストである父の影響で幼い頃から音楽に親しみ、やがてMySpaceやYouTubeにエヴァリー・ブラザーズなどのカヴァーをアップするようになる。2008年に現在のユニット名で活動を開始。2009年にトゥース&ネイルと契約し、2010年3月にファーストEP『Sing It Now』を、同年11月にホリデイEP『Once A Year: A Poema Christmas EP』をリリース。その後も学業に励む傍ら、マイペースにライヴを行っていく。2012年9月にファースト・アルバム『Remembering You』を発表。このたび日本独自編集盤『Poema』(ユニバーサル)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年06月19日 13:15

更新: 2013年06月19日 13:15

ソース: bounce 355号(2013年5月25日発行)

構成・文/山口智男