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インタビュー

石塚隆充

真髄を極め、オリジナルに意欲を燃やすトップ・カンタオール

2000年、約1年半の初ヘレス修行から戻った彼の輝きは、実にまばゆいほどだった。現地でギタリスト沖仁とのコンビを始動。閉鎖的なシーンに新風を送り込み、今や誰もが認める別格のフラメンコ歌い=カンタオールだ。一昨年、昨年でスペイン延べ6都市の公演を敢行し、国内ではレパートリーの領域拡大に挑戦中。不惑を迎え、『レリキア』に続くセカンド作をここに完成させた。精悍な面立ち、おっとり噛みしめるような口調。ディープな歌声とのギャップに、女性ファンが多い。

声楽を学びつつのスタートと異色の転向だったが、歌曲の厳密な発音訓練が役立ったという。

「歌い始めて5~6年、本物を聴く機会が日本では限られていたので、商業的でない生活の中にある歌をヘレスで聴いた時、すごく感動して。その衝撃から、さらに勉強しようと思いました」

具体的にどうやって歌を吸収していったのか?

「サンティアゴ地区の広場に毎晩、というか四六時中、住人のジプシーの10代、20代前半の連中がたむろしていて、そこに混ざるんです。彼ら、会話していると5分おきぐらいに歌い出すんですよ。即興で歌い、みんな大笑いして、また落ち着いて話し始める。それがもう延々と続く」

ヘレスのそんな場も、すでに失われたとか。

「寂しいですよね。たぶんユーロ導入で、街が整備され始めてからだと思います。ヘレスのリズムは独特で、乗りが違う。先を急がないで、まず味わって楽しむという感じです。単純な音階のトラディショナルなメロディを、気持ちを込めて歌う。飾らない、素朴な歌が残っています」

現地のうるさがたが集まるペーニャ(愛好家の場)で、実際に歌ってみてどうだった?

「やっぱりヘレスが一番厳しい場所。街の全員が聞く耳を持っていて、土地の人間じゃないと歌えないって信じてますからね。その意味で僕はものすごく無謀なことをした。でも寛大に受け容れてもらえて、あの時、フラメンコを歌っていて本当に良かったと…。一番怖いところで歌ったら、もうどこでも歌えると、自信に繋がりました」

新作には、多彩なオリジナルや朴訥で胸に沁み入る日本語カンテ、こぶしとメリスマが交錯する絶品演歌ほか、カヴァー曲も前作より増量。

「コアな世界は大事にとっておいて、ソロ活動では音楽的にもっと広げたかった。フラメンコの音楽の可能性を、僕のフィルターを通して伝えたい。まだまだ日本語でやりたいことがあります」

写真©Luis Castilla

LIVE  INFORMATION
『「Revolución」リリースツアー2013春』

出演 : 石塚隆充(Cante&g)石塚まみ(P)コモブチキイチロウ(b) 大儀見元(per)
5/7(火)六本木アルフィー
5/8(水)名古屋 スター☆アイズ
5/9(木)金沢 もっきりや
5/11(土) 大阪 ロイヤルホース

http://www.takante.info/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年05月01日 12:20

ソース: intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

interview&text:佐藤由美