インタビュー

Celine Moinet

シュターツカペレ・ドレスデン首席オーボエ奏者、満を持してCDデビュー!

2011年のウィーン・フィルのアジア・ツアーに、ウィンナ・オーボエでなくフレンチ式オーボエを携えて登場した女性ゲスト奏者の姿を覚えている方は多いだろう。彼女の名はセリーヌ・モワネ。マンハイム州立劇場管首席を経て、2008年からはシュターツカペレ・ドレスデン(SD)の首席を務める才媛である。実は彼女、日本へは既に何度も足を運んでいる。「2009年にルイジ&SDでしょ、それに10~12年にはPMF。11年は例のウィーン・フィルもあったし、去年もティーレマン&SD、それに13年にはPAC管と新日本フィルに……」

5人兄弟の末っ子としてフランス北端の町リールで生まれ育った彼女だが、パリ音楽院を出てからは、ずっとドイツで活躍している。「ドイツに行くのはひとつの夢でした。ヨーロッパの中でも、特にクラシック音楽が脈々と、そして活き活きと続いている国ですし、ドレスデンはとても強固な伝統と個性的な音のあるオーケストラですので、常に柔軟な姿勢で学びながら、ここの伝統の一部となれるよう努めています」

モワネが今でも大切にしているのは、クラウディオ・アバドとの共演の思い出だそうだ。「当時まだ学生でしたが、私の中で何かが変わったと確信するほど素晴らしい体験でした。今でもその時の感覚が残っていていますし、プロの音楽家となって連日本番があるような現在、その初心をキープし続けてゆくのが大切だと思っています」。この時の公演の様子はライヴ映像で観ることができる(アバド指揮マーラー・ユーゲント管によるマーラーの第9交響曲)。

モワネが満を持して発表したデビュー・アルバムは、バロックからコンテンポラリーにわたる独特の選曲が光る無伴奏オーボエ作品集。「オーボエだけでこの楽器の持つ様々な音色の幅と可能性を表現したかったのです。カーターやブリテン、ベリオら20世紀の偉大な作曲家たちが、皆同じソロというだけで、それぞれ本当に対照的な異なった言語で曲を書いているのは面白いですよね。ハルモニア・ムンディのプロデューサーが元オーボエ奏者だったので、こだわりのある、バランスのとれた音が収録できたと思っています」
今後の予定をお報せしておこう。「次のアルバムはおそらく来年初旬頃に出せると思います。詳細は現時点ではまだ言えないのですがハープとの室内楽で、とてもカラフルなものになりますよ」

インタヴューの最後に、震災の年にも日本にわざわざ来てくれてありがとう──そうお礼を言うと、モワネは、いいえ、喜んで来たのよと事もなげな風情で言葉を返してくれた。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年05月07日 12:12

ソース: intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

interview&text : 松本學