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インタビュー

木村大

クラシック・ギタリストではなく、ギタリストとして挑むロックの名曲の数々

5歳からギターを弾き始め、10代前半はコンクールで優勝を重ね、17歳でCDデビュー。その後も英国国立音楽院留学で腕を磨いたクラシック・ギター界の若きエース、木村大。レーベルを移籍しての彼のニュー・アルバム『HERO』はクラシックの枠を超え、ジミヘン、クラプトン、ベック、ペイジ、ランディ・ローズ、ヴァン・ヘイレンといったスーパー・ギタリストの「ロックに勢いのあった時代に生まれた偉大な作品」に挑んだ意欲作だ。

実のところ、そのタイトルとは裏腹に、彼は「当たり前のようにギターがあって、当たり前のように弾かなくちゃならない環境で育った」ので、誰かに憧れたり、目標にしたりしてギターを手にしたわけではないし、師匠である父は息子に「先入観を持ったり、その音楽が正しいとなってしまうので」クラシックのギターのレコードは聴かせなかったという。

その一方で、木村は中学生の頃からロックやメタルも聴くようになり、そのルーツをたどっていく。本作の収録曲はそうやって出会った「僕の中でリスペクトできる存在と彼らが残してきた名曲」を集めたものだ。

ナイロン弦では難しいライトハンド奏法に対応するため、あらゆる技巧を駆使し、血豆を作った集中練習を経て録音に挑んだァン・ヘイレンの《スパニッシュ・フライ》は、「弾きまくって、最後に思わず『イエー!』と言っちゃった」という。また、《展覧会の絵》から始まるELPの《賢人》は、クラシカルな要素もふんだんに含んでいる。それら数々の名曲カヴァーを、木村のオリジナル2曲で挟むことで自身の音楽がどういう位置にあるのかを示そうとねらった構成でもある。

2009年の前作『INFINITY』でオリジナル曲を演奏し始めた木村が、今回こういったアルバムを制作したのは、「ギターの可能性を追求し、ギタリストとしてどう打ち出していくかを自分の中で考えている時期」を経て、「少しずつ研究し、努力して貯めてきたものが実になってきた現在の自分を表現したい」という気持ちがあったようだ。

「初めて僕が(ジャンルの形容無しの)〈ギタリスト〉になったというアルバムを作りたかった。クラシック・ギタリスト、木村大が奏でるロック曲ではなく。やっぱり〈ギタリスト〉という不変の存在であるというのは、僕の中での大きなテーマでもあるんですね。そういう意味では、クラシカルなルーツも垣間見えて、ロックなところやジャジーな部分もある、とトータルでいろんな奏法と表現が出てくるという点で、こういった選曲が必要だったんです」

LIVE  INFORMATION
『木村大 Guitar Live tour “HERO”』
5/26(日)東京文化会館 小ホール
8/17(土)つくばカピオ・ホール(茨城)
8/22(木)Live Juke(広島)
8/29(木)VOX hall(京都)
8/31(土)ビバリーヒルズ(奈良)

http://www.kimuradai.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年05月13日 16:37

ソース: intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

interview&text:五十嵐正