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インタビュー

幸田浩子

日本人の心の原風景を描いた〈ふるさと〉

幸田浩子がファン待望の〈日本のうた〉をリリース。漢字の故郷ではなく、カナのふるさとがぴったりくる、優しく、暖かい人々の想いを感じさせる作品となった。

「震災後、音楽家である自分に何ができるのかを考えていたとき、ある1曲との出会いがありました。それがこのアルバムを作ろうと思ったきっかけかもしれません。小さい頃母が歌ってくれた歌、外国に住んで遠く日本を思った歌…心の故郷になるような大好きな曲を集めました」

前半を占める山田耕筰のナンバーは、よく知られた童謡や子守歌から芸術歌曲までを選りすぐった。

「《この道》《からたちの花》《ペチカ》…と北原白秋の詞の世界も大好きですが、大木惇夫の《ばらの花に心をこめて》は欧州で日本歌曲を紹介する時にいつも歌っていたお気に入り。歌うたびオペラ『ばらの騎士』の献呈の場面が目に浮かびます。三木露風の《唄》もあの《蝶々》の旋律が何とも微笑ましい。《たたえよ、しらべよ、歌いつれよ》はもともと4つからなる歌の終曲だけあって、華やかで堂々たる雰囲気を持っていますね」

後半は《浜辺の歌》以下、海にまつわる3曲から。

「今回、まわりの親しい人たちにもいろいろと聞いてみたら《椰子の実》は弟が好きな曲だそうで、《浜千鳥》はマネージャーの大好きな曲。勧められて歌ってみたら凄くいい曲だったので…この3曲からは海の大きなエネルギーを感じてもらえたら嬉しいです」

《もう直き春になるだろう》は指揮者として知られる山田一雄の作品。

「これもレコーディングでピアノを担当していただいた寺嶋陸也さんに教えていただいたもの。春を待ち望む気持ちや希望に溢れていて、またひとつ大切にしたい曲が増えました」

川口耕平の《よかった》から珠玉の武満徹ナンバー2曲に続く《春なのに》は、藝大の同級生で陸前高田出身のメゾ・ソプラノ菅野祥子が、震災直後にウィーンで故郷を想って書いた心を揺さぶる佳曲。

「詞もとても彼女らしくて、本人をよく知っているだけに歌う度に涙がこぼれそうになります。当初はこの曲の後に《故郷》で終わっていて、その流れに、切ない想いが募るかもしれないと感じていました。そんな時、『NHKナゴヤニューイヤーコンサート』で復興支援ソングの《花は咲く》を歌う話をいただいて、この2曲がまるで貝合わせのように対になると思い、急遽追加レコーディングをお願いしました。誰かの歌が誰かを励ましている…そんな思いが皆様と共鳴できたら幸せです」

LIVE  INFORMATION
オペラ『夜叉ケ池』(世界初演)

6/25(火)18:30開演
6/26(水)18:30開演
6/28(金)14:00開演
6/29(土)14:00開演
6/30(日)14:00開演

作曲:香月修
原作:泉鏡花
出演:幸田浩子(S)岡崎他加子(S)腰越満美(S)砂川涼子(S)望月哲也(T)西村悟(T)十束尚宏(指揮)三澤洋史(合唱指揮)新国立劇場合唱団他
会場:新国立劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年05月15日 11:59

ソース: intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

interview&text : 東端哲也