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インタビュー

茨木智博

「オカリナの魅力を伝えていきたい。どなたか協奏曲を書いて下さい!」

「オカリナ」という楽器にどんなイメージを抱くだろう。「土臭い、癒し系」といった感じだろうか。そんなイメージを払拭するアーティストが誕生した。茨木智博1984年生まれ。東京音大トランペット科卒。オカリナの地平を広げる、表現力豊かな奏者だ。

「オカリナとの出会いは大学2年の頃、一緒に演奏活動をしていたピアニストからオカリナの魅力を説かれ、奏者を紹介されたのがきっかけです」

忽ちその音色と可能性に魅了されたという。

「トランペットでは表現し切れないものをオカリナでは出来る。自分と相性がいいと思ったのです」

オカリナは単純な構造の楽器なだけに、自分がより音楽を知らないとつまらない楽器になってしまう。そこが面白いのだともいう。

「もちろんトランペットも面白いですよ(笑)。でも、トランペットとはベクトルが全然違うので、トランペットだけだったら気が付かなかった自分の音楽性ややりたいことを気付かせてくれ、それを可能にしてくれる楽器です。その面白さにハマったのです」

オカリナは150年程前にイタリアで誕生した歴史の浅い楽器。オカはイタリア語でガチョウの意。かわいいガチョウの子といった感じの意らしい。

「僕の知る限りではジュセッペ・ドナティという音楽家が様々な土の笛を研究し、もっとちゃんとした楽器にしたいと作ったもの。大小のオカリナがあり、それらを使ってアンサンブルを結成し、街角で当時流行っていたオペラなどを演奏していたようです」

人の声に近い。管楽器の中でも息の影響が大きく、リードなどを通さず近距離で音が鳴る。息がそのまま音になる。それは声を、歌を、そのまま表現できるということであり、同時に、扱い難さにも通じる。

そんなオカリナが日本に紹介されると、日本の風土に合う優しい音色の楽器に改良されていった。

「そのせいか日本ではしっとりとしたオリジナル曲や日本の曲が演奏されがちで、癒し系の魅力が強調され、クラシックの舞台に登場することもなかった。でも、全音階の出る何でも演奏できる楽器です。今なお発展途上楽器ということはありますが、楽器としての地位を高め、クラシックの舞台にも登場したい。アンサンブルはもちろん、協奏曲もいいですね」

なんとも心強い言葉ではないか。今まで軽く見られがちだったオカリナという楽器に光を当てようとする茨木智博。彼のデビューアルバムではその強い意志が表現力となって立ち昇る。色彩に富む歌心と勢いは、現代のオカリナだ。爽やかな人柄も魅力であることを付け加えたい。

LIVE  INFORMATION
『「Ocarina Songs」発売記念コンサートツア 2013オカリナとギターのコンサート~想いをのせて~』

7/13(土)~8/8(木) 出演:茨木智博(オカリナ)大柴拓(ギター)
会場:大阪・播州・神戸・京都・名古屋・長野・新潟・横浜・東京にて
http://www.ibarakitomohiro.com/

写真:秋田大輔

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年06月28日 13:13

ソース: intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)

interview&text:山口眞子