IMAGINE DRAGONS 『Night Visions』
昨年9月にUS本国でリリースされたファースト・アルバム『Night Visions』が、全米チャート初登場2位(全英も2位)&初週だけで83,000枚というセールスを記録。また、休みなく行っているライヴも軒並みソールドアウトという、まさに〈ブライテスト・ホープ〉と呼ぶに相応しいラスヴェガス出身の4人組が、本稿の主役であるイマジン・ドラゴンズだ。ブレイクの発端となったUSのラジオではいまも彼らの曲を聴かない日はなく、TVドラマ「glee/グリー」や映画「アイアンマン3」、ビデオゲーム「ウイニングイレブン2013」をはじめ、さまざまな場面で楽曲が使用されるなど、社会現象と言えるほどの盛り上がりは今年に入っても一向に収まる気配を見せない。
グループの名を世間に広めたのは、エヴァーグリーンなメロディーとハンドクラップのように軽快なリズムが印象的なメジャー・デビュー曲“It's Time”だが、ガラリと雰囲気を変えてダブステップを呑み込みながらダークな雰囲気で迫るセカンド・シングル“Radioactive”、さらにはコールドプレイを想起させるほどの美麗な世界観を湛えた“Demons”と、ヴァラエティー豊かな音楽性でコロコロと違う表情を見せてくれる点も興味深い。彼らの才能をいち早く見抜いたのが、エミネムやニッキー・ミナージュ、クリスティーナ・アギレラなどを手掛けるアレックス・ダ・キッドという事実からも、そのフレキシブルな姿勢を窺い知ることはできるだろうか。
「ビートルズにローリング・ストーンズ、ミューズみたいなバンドや、ポール・サイモンからは大きく影響されていると思う。あと、2パックとかヒップホップにも影響を受けているよ。もっとモダンなロック・バンドに関して言えば、アーケイド・ファイアが大好き。影響を受けてきたアーティストは、本当にたくさんいるんだ。いろいろなタイプの音楽からさまざまな用途を見い出すようにしているし、音楽を作る時は境界線を引かないよう意識して、新しいことにトライしようと考えている。だから、俺たちのレコードはさまざまな面を持っているんだ。フォークみたいにオーガニックなヴァイブの曲もあれば、“Radioactive”のようにEDMっぽいフィーリングを詰めた曲もある。作品ごとに変化していくことを心掛けているんだよ」(ダン・レイノルズ:以下同)。
そんな彼らに大きな変化を与えたのが、私たちには馴染みの深い和太鼓だ。インディー時代にも大小15個ほどのタムや太鼓を使い分けてきたが、約2メートルの大太鼓はステージ上でも抜群の存在感を放ち、華々しさとダイナミズムをサウンドにもたらしている。
「ちゃんと使いはじめてから半年になるかな。和太鼓には昔から興味を持っていたんだ。YouTubeで人々が和太鼓を叩いている映像を観た時に、〈何て素晴らしい楽器なんだろう!〉と思ってね。和太鼓からは凄くパワフルな〈何か〉を感じ取ったし、深くて厚みのあるサウンドだと思った。で、そういった部分をイマジン・ドラゴンズの音楽に採り入れたかったんだ。あのパワフルさは他のどんな打楽器とも違うからね。いまでは俺たちにとって重要な要素となっているよ。和太鼓には本当に魅了されるね」。
ピアノ〜ドラムス〜パーカッションを次々とマスターし、最近ではDJプレイも行っている根っからの勉強家/音楽好きなダンはもちろん、バークリー音楽大学出身者も含む他メンバーの演奏能力は非常に高い。それに加え、結成当初より「世界規模のバンドになること」を目標に掲げるなど、相当な野心家集団でもある。そんな彼らから迸るエナジーは、聴く者すべてを前へ、上へと導いてくれること必至。というわけで、言葉通り〈世界規模〉での大ヒットを現実のものとし、そしていよいよ日本盤化される『Night Visions』をチェックしない手はないだろう。これを聴いて「どんなショウよりも楽しみにしている」と話す今年の〈サマソニ〉に備えるべし。
PROFILE/イマジン・ドラゴンズ
ダン・レイノルズ(ヴォーカル/パーカッション)、ウェイン・サーモン(ギター)、ベン・マッキー(ベース)、ダニエル・プラッツマン(ドラムス)から成る4人組。2008年にラスヴェガスで結成し、2009年に自主レーベルよりファーストEP『Imagine Dragons』をリリース。その後、メンバー交代を繰り返しながら、コンスタントに音源を発表していく。2011年にインタースコープと契約。2012年8月にインディー時代の代表曲“It's Time”を再リリースしたところ、ラジオを中心に話題を呼ぶ。その勢いのまま9月に発表したファースト・アルバム『Night Visions』(Kidinakorner/Interscope/ユニバーサル)が全米2位を記録。〈サマソニ〉での来日に合わせ、7月17日に同作が日本盤化される。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2013年07月22日 19:55
更新: 2013年07月22日 19:55
ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)
インタヴュー・文/宮原亜矢