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インタビュー

Geila Zilkha

ライヴで育んだ自由な発想に、豊かな表現力が見事に呼応した3作目

子供の頃からアルトサックスの音が好きで、17歳でバークリー音楽院に留学するが、意外にもそこで開眼したのは「VOICE」という新たな楽器だった。そんな背景からギラ・ジルカには声を楽器のように操りたいとの思いがあり、新作でも随所でスキャットが披露される。アルトヴォイスで繰り広げるそれは、カサンドラ・ウィルソンのような存在感があってカッコいい。

「17歳の頃から表現したいことが私の体にいっぱい蓄積されている。最初はサックス奏者志望だったから、フレージングがサックスのようになったり、スキャットをやるのは、私には自然なことなんですよね」

2年ぶりの新作『Day Dreaming』は、スタンダード、オリジナル、R&Bのカヴァーという編成だ。

「この2年間、ライヴの回数がすごく増えていったなかで評判が良く、なおかつ私自身があの時のあの演奏が良かった、と強く記憶に刻まれている曲を選んでいます。たとえば、ロバータ・フラックの《The First Time Ever I Saw Your Face》。オリジナルよりもスローなアレンジで、歌うのは簡単じゃないけれど、昨年TOKUとのライヴで初披露したところ、会場の空気が変わるほどの手応えが得られたので、それを再現したくて、今回TOKUにも参加してもらいました」

エキゾチックなラテン調にアレンジされた《Summer Time》も、ライヴで大成功した時に組んだピアニスト、深井克則とレコーディングするなど、曲ごとにメンバーを変えている。そこが「贅沢よね」と言いつつもこだわった点だ。ギラが考える歌の方向性、アイデアは、竹中俊二がアレンジで具現化していく。「私が言ったことが3程度だったら、それが10以上になって返ってくる」と最大の信頼を寄せているプロデューサーだ。そのなかで彼女のユニークな発想が反映されているのが《Moonlight Serenade》だ。

「この曲の歌詞を現代に置き換えてみると、ストーカーっぽく感じられるので、ビリー・ジョエルの《ストレンジャー》にインスパイアされたワイルドなアレンジで歌おうと。そこにはSOLO-DUOというデュオを組んでいる矢幅歩の声が必要だと思った。オリジナルが好きな人からは、素敵な歌をこんな風にしてと、怒られるかもしれないとは思ったんだけれど…(笑)」

怒るどころか、自由な発想が歌の翼になる可能性、それはこの曲に限らずだが、きっと多くの人にはその面白さが痛快にさえ感じられるはずだ。実際に新作から竹中俊二と共作した新曲《Phoebe》や《Summer Time》がロンドンのラジオ局ソーラーラジオのジャズ番組でピックアップされて、繰り返し放送されるなど、海外でもギラ・ジルカへの注目度が今増している。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年08月21日 17:41

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview&text:服部のり子