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インタビュー

Tony Bennett

©Larry Busacca

87歳、奇跡の来日が決定した
トニー・ベネットの究極のベスト盤

1926年8月3日生まれ、今年で87歳を迎えたトニー・ベネット。60年以上ものアーティストとしてのキャリア、100枚を超えるアルバムとグラミー賞生涯業績賞を含む17のグラミー賞を誇る、アメリカ・エンターテインメント界最高のヴォーカリストと呼ばれる大御所中の大御所が、13年ぶりに日本にやってくる。2000年以来となる来日公演は9月7日東京ジャズにて、たった一夜限りのパフォーマンス。

「どこの国に行っても、みんなリズムや音楽を分かっている。同行しているミュージシャンは4人ともすばらしいジャズ・プレイヤーだ。毎晩違った演奏をしてくれる。同じものをやることはないんだ。とてもクリエイティヴだよ。セットリストも即興でやるよ。ジャズ・フェスティヴァルだからね。お客さんに満足してもらうのが大好きなんだ。いいショウを見たとハッピーになってもらいたいね」

来日に合わせて彼の60年を超える音楽人生を総括するような究極のベスト盤『トニー・ザ・ベスト/ The Classics』が8月28日発売となる。1951年初の全米No.1シングル《ビコース・オブ・ユー》や、トニーの代名詞《霧のサンフランシスコ》などライヴの定番曲・代表曲から、究極のデュエット・ナンバーまで、トニー自身が選曲。

「クラシックな歌の定義とは500年や50年も前に書かれたものであっても、昨日書かれたかのように響く歌だと私は思う。私のレコーディング・アーティストとしてのキャリアの中から〈クラシック〉な歌を選んで欲しいと頼まれたとき、私は2つのことを心に留めた。時代を超える価値を最高水準で体現する歌を選ぶとともに、それらの歌がとても直感的で〈ライヴ〉なアプローチで歌われているパフォーマンスを選ぶこと。私がこのアルバムのために選んだ歌は、これら両方の基準を完全に満たしている」

2006年『DUETS I』、2011年『DUETS II』が全世界で大ヒット。『DUETS II』ではレディー・ガガや故エイミー・ワインハウスとの共演などで大きな話題を呼び、「史上最高齢全米初登場No.1」記録を樹立したのはご存知の方も多いと思うが、それ以前にも数多くのスーパースター達との見事なデュエットを発表している。

「長年にわたって共演を楽しんできたアーティストたちとのデュエット・パフォーマンスの中から、印象に残る曲を必ず入れたいと考えた」

アメリカ・エンターテインメント業界の最高峰とも言える両巨頭の夢の共演、故フランク・シナトラとの《ニューヨーク、ニューヨーク》をはじめ、故レイ・チャールズ、スティーヴィー・ワンダー、バーブラ・ストライサンドなどのレジェンド達から、ジャズ・アルバムを一緒にレコーディングしていると噂されているレディー・ガガ、生前最後のレコーディングとなったエイミー・ワインハウス、8月に新作をリリースするジョン・メイヤー、クリスティーナ・アギレラなどの若手との共演まで、トニー・ベネットのデュエッツの〈歴史〉ともいえる極上のデュエット・ナンバーが満載。更に日本盤のボーナストラックにはビリー・ジョエル、セリーヌ・ディオンの共演曲が収録されている。自身のライヴでも共演したことのあるビリー・ジョエルは「トニーは彼自身が楽器さ。トニーはプレーヤーのように歌う。彼は〈楽器〉の使い方を心得てる」と表現した。また、ビリーの作品のプロデューサーとしても有名でトニーの近年の作品のほとんどを手掛け、先日惜しくも亡くなった、プロデューサーのフィル・ラモーンは『DUETS』のレコーディングについてこう語っている「基本はライヴ。スタジオで起こった奇跡がそのままパッケージ化され、若手とのレコーディングは彼らの良き経験となる。トニー・ベネットの音楽はエンターテインメントの最高の教科書だ」

若手アーティストはみんなトニーをリスペクトする。ジョン・メイヤーは「トニーが酔っ払いのフリをし、僕にもマネさせて酔っ払った演技をしながら録音したんだ。バーテンダーに『酒をくれ』なんて言ったりしてね。全部その場での即興さ(笑)」。エイミー・ワインハウスは「トニーと隣り合わせに立って、一緒に歌えることが夢のよう。彼の歌は本当に素晴らしい」。レディー・ガガは「トニーの表現方法は昔から大好きだった。時代を選ばないし彼の歌は意味をなさない時がない。常に心を込めて歌っているのが素晴らしい」と共演の思い出を語る。

トニー自身も「若手の多くは驚いていたね。彼らの多くはアルバム1枚レコーディングするのに半年はかけるけれど、私は3時間で終わるんだ。3回もやれば決まる。完成だ。だからみんな驚いていたよ。『こんな風にやったことがない』ってね」

彼の60年以上の音楽人生を1枚に集約したような究極のベスト盤──「アーティストには情熱が必要だ。情熱がなければ やめていただろう。でも私はやめなかった。まだ早いと思っている。私がアルバムに収めたいのは感情なんだ。それがなければ(CDは)ただのプラスチックの物体だ。魂を込めなければならないんだ」
そして、自身の音楽人生を振り返ってこう語る。

「音楽は私の人生そのものだ。愛している。飽きることなんてない。歌うのが大好きなんだ。歌で人の心を明るくさせるのが好きだ。前向きで希望のある曲を選んで

人生は素晴らしいものだということをオーディエンスに伝えたいと思う。贈り物でもあるということをね」

最後にあなたにとって「音楽」とは? という難しい質問にこう答えてくれた。

「いい音楽は真実だね」

LIVE  INFORMATION
『第12回東京JAZZ』

9/7(土)東京国際フォーラム ホールA

http://www.tokyo-jazz.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年08月29日 13:01

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview & text :泉 哲