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インタビュー

NIGHTMARES ON WAX 『Feelin' Good』



変わらない心地良さを抱いて着実に進化を続ける男の新作、聴くなら……NOWでしょ!



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作品ごとに〈今回はこういうコンセプトです〉〈新作ではこんなサウンドに取り組んでみました〉みたいなことをハッキリ謳ってくる人ではないから、〈今回もいいよ!〉と言ってしまえば終わりだったりする部分もある。ナイトメアズ・オン・ワックスことジョージ・エヴリンが完成させた通算7枚目のアルバムは、まさにそんな仕上がりである。これまでに彼が推進してきたバレアリックなフィーリングを下地に意匠を磨き上げた、そのタイトル通りにただただ『Feelin' Good』な作品というわけだ。

このニュー・アルバムの背景には、7年前にリーズから家族で移住したイビザでの生活がある。世界中をツアーして疲弊していたジョージだったが、〈新たなホーム〉を落ち着いた環境に構えることによって「何のしがらみもなく、自分がやりたくて最初に音楽を始めた頃の気持ちや感覚が戻ってきた」のだそうだ。

「自分のパーティー〈Wax The Jam〉を始めて、ラジオで〈Wax The Box〉という番組も始めて、5年間毎週続けている。イギリスにいた時もそうやって自分のパーティーと海賊ラジオを始めるところからすべてが始まったから。それがずっと僕の活動の土台だったんだけど、ツアーなどが忙しくなって止めてしまった。だから土台をなくしてしまった状態だった。それが取り戻せたのが大きかったな。そもそも、何でこういう音楽活動をしているのかを思い出させてくれた」。

なかでも、DJをしながらミュージシャンたちと即興でジャム演奏を繰り広げているというレジデント・パーティー〈Wax The Jam〉の在り方こそが新作のインスピレーションに直結したのだそうだ。

「特定のアーティストや作品よりも、この自分のパーティーでの体験からいちばん影響を受けていると思う。セッション中に〈これはいい曲になるぞ〉と思った瞬間のことを覚えておいて、それを再現しようとするところから曲作りが始まるんだ。“Now Is The Time”は特にそのいい例だね」。

トロリとダビーなその“Now Is The Time”や、ホーンとクラップの効いたディスコティークな“Tapestry”、往年のラテン・ハウスのような熱気を帯びた“Eye(Can't See)”など、いつも以上に粋でダンサブルな側面が際立って素晴らしい。一方で、フォーク歌手のケイティ・グレイを迎えたトリップホップ風の“Masterplan”や、インプレッションズを想起させるシカゴ・ソウル調の“Give Thx”も感動的にそびえている。そのフィーリン・グッドな連なりが、まさに『Feelin' Good』なのだ。「音楽を聴くこと自体が、楽しいからすることだ」と語るジョージはまったくもって正しいし、だからこそ今回もNOWは信用できるのである。



▼関連盤を紹介。
左から、2011年のミックスCD『Nightmares On Wax Presents Wax Da Beach』(Ministry Of Sound)、ナイトメアズ・オン・ワックスの2008年作『Thought So...』(Warp)、『Feelin' Good』に参加したウォルフガング・ハフナーの2012年作『Heart Of The Matter』(Act)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年10月24日 18:00

更新: 2013年10月24日 18:00

ソース: bounce 359号(2013年9月25日発行)

インタヴュー・文/轟ひろみ