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インタビュー

ジュークに通じるブーティーな魅力



ゲットー・ハウスの進化型であると同時に、エレクトロ(・ファンク)の亜種として考えるなら、ジュ-クはハウスであると同時にヒップホップでもある。いわゆるBPMの話ではなく、例えばルークのケツ振りクラシック“I Wanna Rock”(92年)なんて、執拗なイントロのループからしてジューク的な快感で満ち溢れたものだ。80年代のエレクトロを経由してマイアミとデトロイトの90年代サウンドを追っている人には言わずもがなだからして、いわゆる〈CLUB〉コーナー的な快感でのみジュークが消費されるのには若干の違和感があるという人も多いのではないだろうか。マイアミ・ベースに由来するニューオーリンズ・バウンスを基盤に、さまざまな形で開花した90年代以降の南部ヒップホップ・ビートにおける倍速オリエンテッドなカッコ良さもジュークとは遠からずの関係にあるブーティーなものだろう(バウンスをメインストリームのサウンドに押し上げたマニー・フレッシュはシカゴの人である)。

そんな見えづらい関係は現在に至るまで続いているわけで、例えばジュニア・リードを声ネタとして用いたゲームの“It's Okay(One Blood)”(2006年)なんて某惑星のコンピにてリメイクされるまでもなく最初からジュークっぽいトラックだと思うし、リル・ウェイン“A Milli”ぐらいからバングラディシュらが確立したフォーミュラにもそれは当てはまることだろう。実際、ディプロやA・トラックらがそうしたメインストリームに絡むようになった時期には、本職のDJガント・マンがビヨンセの公式リミックスを手掛けたり、キッド・シスターやマルーカのプロデュースに招かれたりこともあった。

そうした背景があるからこそ、DJラシャドがジューシーJとの共演を熱望してもまったく突飛なこととは思えないし、主にBooty Tuneが日本に紹介しているタイプのジューク作品も黒いゲットー・テイストに溢れたヒップホップとして楽しむことのできるものが多い(メジャー・ヒット系ヒップホップのネタ使いも相当多い)。日本のラッパーがジュークに挑んだ好企画盤『160OR80』のCD化も決まったばかりだし、こういった試みが目に見える形で進んでいけば、ジュークはもっと普通におもしろいダンス・ミュージックとして受け止められると思う。



▼関連盤を紹介。
左から、ルークの92年作『I Got Shit On My Mind』(Luke/Lil' Joe)、ゲームの2006年作『Doctor's Adovocate』(Geffen)、キッド・シスターの2009年作『Ultraviolet』(Fool's Gold/Downtown)、ジューシーJの2013年作『Stay Trippy』(Kemosabe/Columbia)、EQ・ホワイのニュー・アルバム『The Dynamic Time』(Booty Tune/melting bot)、2013年のジューク×日本語ラップ企画盤『160OR80』(Thailandbookstore)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年11月20日 14:50

更新: 2013年11月20日 14:50

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

文/出嶌孝次

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