朴葵姫
さらに、さらなる高みへ。弦の響きとともに
何かのきっかけで、朴葵姫のステージに接する機会があったとしよう。ある人はこんな小柄なお嬢さんがギターを抱えるようにして、と思うだろうし、またある人はカッワイーッとときめくだろうし、ちょっと意地悪な人なら、テレビ映りのいい素材を見つけてきたものだ、と通ぶってつぶやくに違いない。しかし彼女の指が弦に触れ、音色を引き出したら、誰もがそのテクニックとしなやかな音色に圧倒され、様々な印象(もしくは雑念)はどこかに吹き飛んでしまうだろう。
数年前からギター界で話題になっているギタリスト、朴葵姫。メジャー2作目となる今作では、ラテンアメリカの作家による作品を集めている。
「来年にはブラジルの作曲家の作品を集めたアルバムを考えていたので、今回は南米でもそれ以外の作曲家の作品でまとめてみました。私自身は古典のアルバムにトライしたかったのですが、今はたくさんの人に私のギターを聴いてもらう時期だとのアドバイスもあって。それに私が一番好きなA.バリオスの曲も入れたかったんです」このアルバムで、朴はバリオスの名作《大聖堂》や延々とトレモロが続く《最後のトレモロ》に挑んでいる。
「バリオス自身はすごく指が長かったので、彼の曲を弾くのはすごく難しいのですが、作品はとてもロマンチックで、音楽を愛する全ての人のために書いたといってもおかしくないくらい、気持ちを注いで曲を書いています。個人的に非常に好きな作曲家です。《最後の…》は、割と(トレモロが)得意な私でも、コントロールがなかなか難しい曲ですね」
そんな難曲をこなす一方で、ピアソラやキケ・シネシの曲も収録しているのがおもしろい。
「どちらも初めて手がけるんです。ピアソラは将来的に曲集に取り組まないといけないって思っているので、バラバラに出してはいけないと思っていました。でもギターのための曲ではないので、結構難しくて」。そうはいうものの、アルバムでは作曲家の世界観を彼女なりに理解して、しっかりとした表現にまとめ上げている。やはり並のギタリストではない。
後日、彼女のリサイタルで演奏を聴く機会に恵まれた。冒頭で書いた印象がそれだが、さらに興味深かったのは、見事な演奏であるにもかかわらず、その音色にもっと表現したい、もっと歌いたいという叫びのようなものが詰まっているように聴こえたことだった。その声なき声を感じた時、間違いなく彼女はこれから先もものすごいスピードで進化し、さらにその進化が果てなく続いていくことを確信したのだった。
LIVE INFORMATION
『朴葵姫 ギターリサイタル』
○10/25(金)愛知・電気文化会館 ザ・コンーサートホール
○12/24(火)東京・大田区アプリコ
○2014/2/16(日)新潟・だいしホール
○3/1(土)神奈川県・海老名市文化会館
『朴葵姫・大萩康司 ギター・デュオ』
○2014/1/31(金)2/1(土)福島・いわき芸術文化交流館
http://www.concert.co.jp/artist/kyuu_hee_park/