インタビュー

ACO 『TRAD』『LIVE LUCK』



信頼のバンド・メンバーとの一夜を収めたライヴ盤と、同じ面々で作り上げた新作──いまのACOの充実ぶりが伝わる2作品!



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2010年以降、順調にリリースを続けるACOが新作を2枚同時にリリースする。『TRAD』は、自身の過去曲とマッシヴ・アタックなどの海外アーティストのカヴァー、そして新曲で構成されたもの。一方の『LIVE LUCK』は、昨年1月に発表したアルバム『LUCK』のリリース記念ライヴをパッケージしたもので、ACOにとって初のライヴ盤となった。『LIVE LUCK』で聴けるバンド・アレンジの楽曲が改めて『TRAD』にも収録されているように、この2枚はゆるやかに結び付いている。

カヴァー中心の作品については、「ずいぶん前から作りたいと思っていたのですが、いま、とても制作環境が良いので作り時だと思いました」とのこと。今回みずから改編した楽曲は『Lady Soul』(98年)から1曲、『absolute ego』(99年)から3曲、『material』(2001年)から3曲となった。

「ソニー在籍時代に作ったアルバムのなかでは、『absolute ego』がやはり鍵になっています。それ以前のアルバムのなかにももちろん好きな曲はありますが、そうでない曲もある。プロデューサーや共同制作者と作業するうえで、伝えたいことがなかなか伝わらないという経験もありました。そういう意味では『absolute ego』以降の作品は、どうしたら自分がやりたいことを人に伝えられるのか、コミュニケーション能力が鍛えられてから制作できているので、納得した仕上がりの曲が多いです」。

“悦びに咲く花”や“4月のヒーロー”はライヴ盤にも収録されているアレンジ。打ち込みの曲をバンド演奏にするうえでもほとんど苦労はなく、違和感は感じなかったという。海外アーティストのカヴァーについては「自分が良い曲だと思えばどんなジャンルの曲でもやってみようと思います」とのことで、マッシヴ・アタック、スカウト・ニブレット、ジェフ・バックリーがピックアップされた。「ノートに落書きをしているみたいな、いい意味で雑な感じがすごく良い」というスカウト・ニブレットの“Kiss”は、もともとはボニー・プリンス・ビリーをフィーチャーしたナンバー。ここではボニーにあたる男性ヴォーカルとして、toeの山嵜廣和をゲストに迎えている。

「山ちゃんのセクシーな声が合うのではないかと思い、頼んでみました。以前、toeの作品で誘ってもらったので、今回は私のアルバムで違う山ちゃんを見せてほしかったから。原曲の歌もセクシーですが、山ちゃんの歌もとてもしっくりきて感動しました」。

オリジナルの新曲“赤いよ”は、“devil's hands”や“Innocent”など、近年のACOが作ってきたゆったりしたテンポのエモーショナルな歌のなかでも屈指の名曲と言っていいだろう。

「デモ制作の段階で手応えを感じていて、出来上がりが見えていたのでそれが良かったと思います。最終的に弦のアレンジやピアノなど、プレイヤーの腕でグンと素晴らしくなりましたし」。

かように、バンド・メンバーに寄せる信頼はとても大きい。その結果として、ナチュラルな姿勢で音楽制作に臨めているということが大きなポイントになっているのは間違いなさそうだ。現在のACOの充実した活動が窺い知れる2枚ではないかと思う。



▼今回ACOがカヴァーした楽曲のオリジナルを含む作品を一部紹介。
左から、ジェフ・バックリーの94年作『Grace』(Columbia)、マッシヴ・アタックの98年作『Mezzanine』(Melankolic/Virgin)

 

▼ACOの近作を紹介。
左から、2010年作『devil's hands』、2012年作『LUCK』(共にAWDR/LR2)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年11月26日 14:35

更新: 2013年11月26日 14:35

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

インタヴュー・文/南波一海

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