インタビュー

eznokka 『Remmeldea』



swimmingpoo1と背景が重なる〈架空のRPGのサントラ〉。そこでは20年前のゲーム音楽がロマンティックに鳴り響いて──



Eznokka_A



吉野守のソロ・プロジェクト、eznokkaによる初作『Remmeldea』がおもしろい。ベッドルームで構築されたこのエレクトロニック・ミュージックのテーマは〈架空のRPGのサントラ〉。しかも、より具体的に〈20年前=93年のゲーム〉を想定し、そのサウンドをフィクショナルに再現しているのだ。

「10年くらい前に、友達が自作していたRPGの音楽を頼まれたのがきっかけなんです。結局そのゲームは完成しなかったんですけど、サントラはずっと作り続けて400曲くらいになってしまった(笑)。これをどうにか出さなきゃと思って」。

93年と言えば、ファミコンの次世代機であるスーパーファミコンの時代。レトロ・ゲームのピコピコ音より自由だが、現在と比較すればずっと素朴……そんな時期のゲーム・ミュージックにフォーカスするという試みは、これまで聞いた試しのないような気が。彼は木管楽器やピアノ調の電子音を散りばめながら、シンフォニックでロマンティックなアンサンブルを紡いでいる。

「チップ・チューンに対するカウンターという意識もあるんですけど、単純にこの頃のゲームの音──生楽器をシミュレーションした電子音が好きなんです。それを生楽器の代用として捉えるんじゃなくて、その音自体にしかない魅力を追求したくて」。

プロデュースを手掛けたのはswimmingpoo1などで活動する根岸たくみ。アートワークもswimmingpoo1同様に倉島一幸が担当している。今回同時にリリースされる2作品が、その世界観を少しずつ共有しているところが興味深い。

「リズム・アレンジの多くは根岸にお願いしたんですが、彼がダブステップ的なビートとか、現代的なアプローチを組み入れてくれました。クラブ・ミュージックのクールネスを採り入れたかったし、クラブ・カルチャーどっぷりな人がゲーム音楽を聴くきっかけになったらいいなと」。

コンセプトだけに目を向けると、聴き手を限定するニッチな作品に思えるかもしれない。だが、さまざまなカルチャーを巻き込み、音楽シーンのあちらこちらでトレンドにもなっている90年代リヴァイヴァルのヴァリエーションとして本作を捉えることもできるだろう。エアポケットのような領域を掘り当て、追求したこの作品からは、フレッシュな2013年の空気を感じ取る人も多いはずだ。

「チルウェイヴ以降、打ち込みでもビート以外の側面に目を向けたものが増えてきたように思うんです。だからこそ、こういう作品が作りやすかったし、そういう意味での同時代性は意識したいですね」。



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掲載: 2013年12月25日 00:30

更新: 2013年12月25日 00:30

ソース: bounce 361号(2013年11月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔