PAVLO
地中海ギタリストは、アイディアとエネルギーの塊!
写真提供:カナダ大使館/Misako Terauchi
昨年11月のショウケース参加後、9キロ減量とスリム化。今夏のコットンクラブ初出演で、軽妙パフォーマンスを披露したギタリストのパヴロ。とにかく熱い! 腰を振る、テーブルにのぼる、客席を回る、記念撮影に応じながら、ひたすら全力投球で弾く。しかも曲調は一本調子にあらず。
「名声や金のためでなく、大好きなギターに取り憑かれただけ。30年間、同じ情熱をもってギターと接している。自分のすべてを賭けて演奏するから、終演後、抜け殻みたいに燃え尽きちまうんだ」
バンド名もパヴロ。本名パヴロ・シムティキディス。カナダはトロント生まれのギリシャ系第一世代。ご両親は1960年代に移住したそうだ。
「50~60年代、多くの人々が職を求めてドイツ、オーストラリア、カナダへ渡った。両親は母国文化を重んじたし、音楽家としての成長過程でも、ギリシャ文化の影響は絶大だったね。とても深く音楽を愛していた父は、少年の僕を、パコ・デ・ルシアやサビーカス公演に連れて行ってくれた」
現バンド・メンバーが固定したのは、いつ?
「99年頃。4人で2000回余のライヴを経験してきた。ブズーキ奏者はギリシャ、ベーシストはポルトガル、打楽器奏者はイタリアがルーツ。文化背景の誇りが大きな絵、物語を完成させると思う」
最新作のタイトルが意味するところは?
「年間150本もショーをこなし、自宅はフロリダだけど、ほとんど留守。ある日、本当の僕の住所はどこなんだ!? と考えた。飛行機の中か? とね。そうか、このギターが連れて行ってくれるところ、どこでも我が家……だから、シックス・ストリング・ブルヴァード(6弦通り)なんだ」
多彩な弦楽器を重ねる音は、あたかも架空の島で繰り広げられる、異民族セッションのようだが。
「それは素敵なイメージだね(笑)。そう、僕らのライヴに来たら、地中海のバカンスを楽しんで欲しい。目を閉じても、踊ってもいいから……」
ご自身の音楽を、地中海と規定されたのはなぜ?
「以前メディアで、フラメンコとかクラシックと誤って紹介され、恥ずかしかった。だから敢えて、メディテラネアンと名づけることにしたんだよ」
ライヴでゲスト弦楽器の登場はないが、ブズーキより小型のバグラマも交え、有名曲《日曜はダメよ》を盛り込むなど、民俗色の演出も巧み。
「今のところ吐き出せたのは、5%程度。脳内にアイディアが溢れて困る、頭がおかしくなりそうだ」と、エネルギーの塊みたいな44歳は微笑んだ。