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インタビュー

山田和樹



山田和樹_360
©山口敦



「ロールキャベツ男子」でもいいかな? 指揮者、山田和樹の今

「21世紀のヤマカズ」。もう巨匠・山田一雄のパロディみたいな愛称は不要かもしれない。30代半ばにさしかかった山田和樹は日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、スイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者はじめ内外ポストでの活動を本格化させ、世界のオーケストラが「一度は共演したい」と考える新進の一角に食い込みつつある。

――日本とヨーロッパの違いを実感するか。

「技術格差を感じたことはない。違いは表現における洒落っ気、色合いの部分に現れる。日本は良い意味で『いい加減』になれず、全部ちゃんと弾こうとする。特にフランス音楽では、あいまいで紗がかかっているべきところが大切。スイス・ロマンドは、実に巧みに雰囲気を醸し出す」

「むしろ客席の熱心さに、違いがある。先日、スウェーデンでスポンサー公演を指揮したが、招待客は集中を欠き楽章ごとに拍手が起きた。日本の聴衆は昔も今も熱心で、今や本場より良くなった。ただ鉄道マニアに乗りテツ、撮りテツの分類があるように、日本の音楽ファンはオーディオ派、ライヴ派、アマチュア・オーケストラの自分でやる派に分かれ、演奏会に来る人が限られる。細分化を放置しては未来がないと思い、日本フィルの演奏会では児童合唱を交え、親御さんが器楽合奏にも興味を持って下さるような仕掛けを施す。外見は草食系でも中身は肉食系、という『ロールキャベツ男子』の路線でいく」

――日本フィルでやりたいことは。

「何か『柱』がある形の3年企画を実現する。岩城宏之さんや若杉弘さんの世代は初演を振り続けたが、日本の20世紀作品にも十分な蓄積がある今、新作初演の一方で旧作の再演を両立させていきたい。海外では武満徹さん以降の日本人作曲家、例えば藤倉大さんらの紹介にも力を入れる」

――スイス・ロマンドとのレコーディングも始まった。

「ペンタトーン・クラシックスにフランス、ドイツ、ロシアそれぞれの舞踊的音楽を1枚ずつ3作、録音する。第1作にはビゼー『アルルの女』全曲、グノ―『ファウスト』のバレエ音楽、フォーレ『マスクとベルガマスク』組曲を入れた」

――懸案はオペラ指揮。

「2015/16年シーズンにヨーロッパで、いよいよオペラへの門が開かれそうな気配。『火刑台上のジャンヌ・ダルク』の線から入れるかもしれない。ゆくゆくは山田一雄さんが日本初演した同じオネゲルの作品『ダビデ王』を日本フィルで、ジャニーズ系タレントの日本語ナレーションで上演したいなどと夢みている」



LIVE INFORMATION


『横浜シンフォニエッタ 第7回演奏会』
○2014/1/17(金)青葉台フィリアホール

『日本フィルハーモニー交響楽団』
○4/25(金)26(土)東京定期演奏会 サントリーホール
○5/10(土)横浜定期演奏会 横浜みなとみらいホール他

『スイス・ロマンド管弦楽団 日本ツアー』
○7/4(金)~12(土) サントリーホール他全8公演



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年12月11日 10:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview&text:池田卓夫(音楽ジャーナリスト)