インタビュー

大貫妙子



個性的な曲と純粋な愛が詰まった甘く香る花束

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「シュガーベイブの頃は、メジャーセブンスを使った曲なんて軟弱や! 木に止まって泣いてるセミみたい、とかひどいことをいっぱい言われましたよ(笑)。でもあれだけ叩かれながらも、僕たちはこれがやりたいんだ!って意志はしっかり持っていた。やっぱり自分らしくあることが大事というか、それしかないじゃない? 私はジョニ・ミッチェルのようにありたいと思い続けてきたけど、彼女のインタヴューを読むと〈なんで私は売れないのかしら〉って愚痴をこぼしていたりする。私たちがこんなに応援しているのに! ひょっとしたら当時のシュガーベイブのファンも同じことを考えていてくれたのかも。私自身、有名になりたいなんて欲はいまだにゼロなんです。でも音楽をやるのがいちばん楽しいし、パリに行ってオペラ座の人たちが私の曲を素敵に演奏してくれるなんて何にも代えられない喜びを経験できている。とにかく次に繋げられるよう一歩一歩着実に進んできたつもりだし、私を受け入れてくれる人を裏切らないよう誠実にやってきました」

と今日までの道程について話してくれた大貫妙子は、センスの塊のようなバンド、シュガーベイブでデビューしてから40周年を迎え、人生で一度きりしかない還暦イヤーを過ごしている。日本のロック/ポップスの黎明期からずっと、成熟した土壌を作るためにシーンの中央で切磋琢磨を繰り返してきた音楽家への心のこもった贈り物『大貫妙子トリビュート・アルバム-Tribute to Taeko Onuki-』がこの たび作られた。奥田民生ややくしまるえつこなど豪華メンバーが集う本作に対して「光栄です。有難く聴かせてもらってます」と話す彼女(内容には一切タッチしておらず)。個性的なカヴァーとピュアな愛だらけで、我々にとっても甘く香る花束となろう。なかには彼女の戦友、坂本龍一と岡村靖幸が組んだ《都会》、同じく女性SSWの草分け、松任谷由実とキャラメル・ママが揃った《色彩都市》もあるなどびっくり玉手箱的な楽しみも。

「奇を衒ったものは結局ダメ。すぐに忘れられていく。そういうものだけはやらない、世の中に恥ずかしいものは出したくないって一念でここまできた。ときどき少し手を抜けば?なんて声が聞こえたりするけど、そもそも抜き方がわからない」と言いながら、「疲れる性格」と笑って付け加える。どんな時代にだって信頼のおける仕事を残し、この人についていけば間違いない、とずっと思わせてくれる人なんてそうそういるもんじゃないけど、このトリビュート盤に並んでいるハイセンスな楽曲の数々に触れていると、大貫妙子というかけがえのない存在の有難さがじんわりと実感させてくれる。実に温かくて素敵なカヴァー盤なのだ。



LIVE INFORMATION


『大貫妙子40th ANNIVERSARY LIVE』

○3/28(金) 19:00開演 
出演:大貫妙子(vo)小倉博和(g)鈴木正人(b)沼澤尚(ds)フェビアン・レザ・パネ(P)林立夫(ds)森俊之(key)
会場:東京国際フォーラム ホールC



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年01月23日 10:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview&text:桑原シロー