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インタビュー

ヒトリエ “センスレス・ワンダー”



独特の〈少女観〉に映した内向きのリリックをフィジカルに発するロック・サウンドを携え、wowakaを中心とする噂のバンドがいよいよメジャー・デビュー!



ヒトリエ_A



「〈言葉を身体で感じる〉というのは僕の理想に近くて。言葉を言葉として認識する前に身体が反応する、という感覚が好きなんです。それをなるべくポップな形で世に示したい、というのが自分のテーマとしてあるんですけど、そういう意味で、いちばんシンプルな形でまとまったのがこの曲ですね」(wowaka、ヴォーカル/ギター)。

自主レーベル・非日常レコーズを立ち上げ、彼の言う〈この曲〉──“センスレス・ワンダー”を表題に据えたシングルでメジャー・デビューを果たすヒトリエは、BALLOOMから発表したボーカロイド作品『アンハッピーリフレイン』(2011年)、そしてLiSAやアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」への楽曲提供などでも高い評価を得るクリエイター・wowakaを中心とする4人組だ。ボーカロイドを使った楽曲を発表していくにつれて、自身と楽曲との間が乖離していくような感覚を覚えていたという彼は、『アンハッピーリフレイン』でそれまでの活動をまとめ切ると同時に、「両者がしっかり噛み合った関係で表現してみたらどうなるのか」という興味と、「自分の言葉を自分で発するというのは、それだけで意味のあること」という考えからバンドを結成。その音楽の特性は、内に向いた膨大な言葉とひねくれながらもキャッチーなメロディー、突進力と肉体性を兼ね備えたグルーヴィーなバンド・アンサンブルが融和することで、言葉そのものがフィジカルなリズムを有しているという点だ。加えてモラトリアムな自問自答を独特の〈少女観〉に投影するリリックも、このバンドに鮮やかな記名性を与えている。

「毎回そうなんですけど、頭の中に登場人物がいて、それが女の子なんですよね。設定は14~17歳ぐらい。実際はどうかわからないですけど、その年頃の女の子って、いわゆるモラトリアム的な部分だったり、何かへの強い憧れだったり、焦りだったり、不安だったり、そういうものが高い次元で渦巻いてるんじゃないかな、そうあってほしいなっていう気持ちがあって。そういうモヤモヤしたものと、あの年代の女の子の佇まいが重なると、僕のなかでしっくりくるんですよね。カッコイイし、可愛いなって思うんです。でも、その女の子が言ってることは自分と重なってて。女の子に言わせてることを、回り回って僕が歌うっていうところに、いまはおもしろさと意味を見い出してます」(wowaka)。

先行シングルから1か月後には、早くもミニ・アルバム『イマジナリー・モノフィクション』をリリース。4つ打ちとシアトリカルなコーラスワークを交えて疾走する“アイマイ・アンドミー”からセンシティヴなバラード“浮遊と沈没と”までの全7曲は、言わば、根底は同じ人物である〈あたし〉のキャラクターを楽曲ごとにスライドさせたパラレル・ワールドだ。サウンド面でもwowakaの作風にメンバー各々の個性を注入することで7通りの〈世界〉が構築されており、例えば“踊るマネキン、唄う阿呆”はシニカルな言葉に音でユーモアを加味した風変わりなナンバーとなっている。

「“踊るマネキン、唄う阿呆”は、もともとはオルタナ・サウンドをベースとしたダンス・ロックだったんですけど、セッションだったり、録りの現場でもアイデア出しを重ねていくうち……これは何だろう?って(笑)」(wowaka)。

「少しの誤差で曲の聴こえ方が変わるから、バスドラは他の楽器と重なってもしっかり聴こえる位置に素材として録ったものをはめ込んでて。そこはこだわりましたね」(ゆーまお、ドラムス)。

「それ含めて、とにかくおもしろい音で録ろうっていうのでエンジニアさんもノリノリで。ドラムがそういう音だったらベースもエフェクターでシンセを噛ませて、とか」(イガラシ、ベース)。

「“踊るマネキン、唄う阿呆”に限らず、いまできることを出し尽くした感覚のあるアルバムですね。伝えたいことと作品性、ヒトリエっぽさと僕っぽさ、全部をわかりやすく詰め込めたかなって」(wowaka)。

〈それぞれのひとり〉を掬い上げて表現する、という由来を持つヒトリエ。もがきながらも〈踊れ〉〈唄え〉と躍動するそのサウンドは、きっとあなた自身の鼓動とどこかでシンクロすることだろう。



▼wowakaによる近年の楽曲提供作品。
左から、LiSAの2013年作『LANDSPACE』、劇伴や劇中歌を収めたベスト盤『魔法少女まどか☆マギカ Music Collection』(共にアニプレックス)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2014年02月19日 18:00

ソース: bounce 363号(2014年1月25日発行)

インタヴュー・文/土田真弓

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