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インタビュー

Pat Metheny

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年03月12日 10:00

ソース: intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)

interview&text:佐藤英輔



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Photo by Naoki Hashimoto



パット・メセニーの描く、今日の空

メセニー、あなたという 人は。鬼のように長丁場のツアーをやり、なのにちゃんとレコーディングもして、アルバムのリリースは途切れない。かと思え ば、新作のプロモーションのためにわざわざ来日までしてしまうのだから!ああ、音楽のムシ……。

“あなたがジム・ホール を見上げたように、あなたが下の世代のギタリストたちから憧憬とともに目標とされる存在となっています。来年には60歳にも なりますが、続く後輩たちを導かなきゃとか、考えたりはしますか?” 実は、それが今回の取材の最初の質問。メセニーが滞日 したのは、彼が敬愛するジム・ホールが亡くなって間もない時期。その死については皆聞くかもしれないので、少しひねった問 いからインタヴューを始めた。

「いい質問だね。僕は年長のミュージシャンをずっと見上げてきたし、僕も年下の担い手から 見上げられる存在であるのは自覚している。実は、新作タイトルの『Kin(←→)』はそういうことを表わしている。この両側を 向いた矢印、(←)はジム・ホールのような僕よりも上のミュージシャンをさしていて、一方の(→)は下の世代のミュージシ ャンたちをさしている。そして、僕たちは川のように繋がっていて、同じものを共有していることを示したかったんだ」

Kinは 親族とか、血の繋がりを意味する。過去の『トリオ99→00』や『トリオ→ライヴ』と同様、→という記号をタイトルに用いてい る事実には、彼が物事を視覚的に捉えるタイプであると認識させられるか。

「視覚的というよりは、あらゆる方向で物事を表 現していきたいという、僕の思いが出たものだね。演奏をする一方でインタヴューを受けるのもそうだし、またアルバム表記を こういうように視覚的な方向に持って行くのもそうだし。それらはすべて、僕の一つの表現として成り立つ。そういう考えの表 われだ」

さて、そんなメセニーの2014年作『Kin(←→)』のアーティスト名義は、パット・メセニー・ユニティ・グループと いう。カルテット編成だった同ユニティ・バンドのメンバー(本人に+して、クリス・ポッター、ベン・ウィリアムズ、アントニ オ・サンチェス)に加え、今作はさらにマルチ・プレイヤーのジュリオ・カルマッシが加わっている。

「ユニティ・バンド作 品を録り、僕はとても楽しんだし、グラミーも受賞したりと成功も収めた。やはり、クリス・ポッターという演奏家とできたの は大きな出来事だよね。それで、その単位で100公演ほどのツアーをやって、バンドは進化し、皆このままバンドを続けたいと思 ったんだ。そこで僕は、このユニティ・バンドをやって行くとしたら、もう少し違うこと、それ以上のことに挑戦して行かなく てはならないと思った。前作『ユニティ・バンド』がモノクロのドキュメンタリーであるとするなら、今回は3Dのアイマックス ・シアター体験と言えるものにしようと思った」

なるほど、“3Dのアイマックス・シアター”というのは、まさに的確な説明 。新メンバーのカルマッシはウィル・リーの推挙による。彼は2012、2013年のリーの来日公演に同行、キーボード、トランペッ ト、テナー・サックス、ギターなどを曲によりいろいろ演奏し、話題を呼んでいた御仁だ。

「新たなコンセプトを実現するに は、さらに1人か2人ミュージシャンを追加し、そしてオーケストリオン(メセニー考案の、大掛かりな自動演奏装置)も併用し なきゃと思った。新メンバーに関してはソリストを入れる必要はなく、色彩感を加えてくれる人材を迎え入れたいと思った。ジ ュリオは僕のバンドに入るのが夢だったらしいけど、本当にパーフェクト。彼みたいな奏者に、ぼくはNYで会ったことがない」

ユニティ・バンドの回路のもと、パット・メセニー・グループの雄大なランドスケープ的表現を求めたように感じます、と彼 に伝えると、「まさに、僕はそういうものを目指したんだ」。そこで四方八方に舞う雄大な情景を描くような楽曲群は、すべて 2013年に書かれている。

「収録曲は、ほぼ3、4月に書いた。メンバーには楽譜で渡したけど、1曲目は長い曲なので、楽譜が膨 大な量だったな。《ボーン》という曲は5月にブルーノート東京に公演に来たさい、どの曲も構成が複雑なので1曲ぐらいはシン プルな曲が欲しいと思って、東京で書き上げた」

そのユニティ・バンドの来日公演の際、オーケストリオン音をバンド音に重 ねる局面もあったが、今作では鮮やかな色づけや立体感を求めんと、その様が拡大されている思いも得る。

「今作は全曲で、 全面的にオーケストリオンを用いている。オーケストリオンというのは、色を加える作業において、僕のなかでとても大切なも のになっているし、今後も僕の作品のなかでは使って行くと思う。僕はまだ、オーケストリオンの可能性の表面しかなぞってい ないな」

クールなメセニーは、答えを返してくる際、話に具体性を持たせるためか、実在のミュージシャン名を挙げることが ある。たとえば、今回の質疑応答においては、「僕も含めて、ミュージシャンはすべからく音楽的に血族的つながりを持ってい る。たとえば、ハービー・ハンコックの場合だと、その前にはウィトン・ケリーがいたりし、多方ではバルトークにもつながっ ている」とか、「ソニー・ロリンズの名言に、“音楽というのは現代の空だ”、というのがある。僕もまさに、そう思っている 」と、いったように。

そんな彼の言い方を借りるなら、今作『Kin(←→)』は音楽家としての様々なつながりに留意しつつ、 自在に表情を変えるアメリカの空を活写したアルバムとなるだろうか。



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