AKIHIDE 『RAIN STORY』
[ INTERVIEW ]
BREAKERZがソロ活動をスタートさせて1年。1stアルバム『Amber』のリリースを皮切りに、アルバム2枚のリリースと、2本のライブツアーを敢行。そして今年4月には初のライブDVDと書籍をリリースする等、メンバーの中でもひときわ勢力的に活動を展開しているギタリストAKIHIDEが早くも3rdアルバム『RAIN STORY』をリリースする。今回は、自身初となるコンセプトアルバム。
雨男と言われるほど昔から雨と関係が深くて<レインマン・雨男>という言葉が頭に浮かんできたのがきっかけ。
―ソロ活動を始めてから約1年経ちますが振り返ってみていかがですか?
「気付いたら3枚目のアルバムが出るっていうことにびっくりしています(笑)」
―1年でアルバム3枚って相当ハイペースですよね。
「かなり早いほうだと思います。毎作それぞれ違うアプローチが出来ているので発見もあり、得るものもたくさんありました。これからも創作活動を含めたソロ活動は続けていきたいと思います。この活動を続けていくことでバンドとして再開した時に、いい化学反応が起きてまた3人で素敵な音楽を作りあげることが出来るんではないかと思っています」
―3人が揃った時どんな化学反応が起きるのか今から楽しみです! ではここからは最新アルバム『RAIN STORY』について伺います。1stアルバムでは自身の <音楽人生>を凝縮、2ndアルバムは、<1日>というテーマで制作されていましたが今回のテーマは<雨>。どういう経緯でテーマを決めたんですか?
「実は次の作品を作る前に、ツアーのスケジュールが先に決まっていたんです。ツアーが雨の時期だし僕自身、雨男と言われるほど昔から雨と関係が深いので、もうこれは<雨男ツアー>にしてしまおうと(笑)。その流れで、コンセプトをかためて作品の制作に取り掛かりました」
―なるほど。では、今作もアルバムでいこうと考えていたんですか?
「一番はじめに“RAIN MAN”出来上がったんですが、その時はシングルにするかアルバムにするかも決まっていなかったんです。でも色々と曲を制作していくなかで<雨>をテーマにした僕らしい作品を創り上げるにはアルバムというサイズ感で発表した方がリスナーの方にも伝わるんではないかなと思って今回はコンセプトアルバムというカタチに決めました」
―“RAIN MAN”がはじめに出来た曲ということでこの楽曲について伺います。この曲は涙腺を刺激する切ないナンバーですね。優しい歌声に胸がギュッとなりました。
「すみません……アルバムのはじめからしんみりさせちゃって(笑)」
―大丈夫です(笑)。この楽曲を制作するにあたってAKIHIDEさんのなかで、どのようなイメージを持っていたんでしょうか。
「雨男というキーワードはありましたが、<雨のなかでどう濡れているのか>、<どういう状態を雨男と呼ぶのか>って考えた時に、悲しみに暮れて佇む主人公の絵が思い浮かんできたんですね。僕は昔から<喪失>というものを音楽で表現したいという気持ちが強くあるので、必然的にそういうテーマが多くなっているような気がしますね」
―歌い方も全体的に世界観に寄り添うような切なく優しい感じになっていますが、歌録りの際に気をつけたことはありますか。
「歌い方以前に、曲を作っている段階で今回は僕が無理なく歌える歌にしようと思ったんです。キーの感じや、メロディの運びとかハマり具合とか含めて。僕の声と合う音はどれなのかを1つ1つ吟味しながら丁寧に作っていきました。そのかいもあって、歌録り自体はリラックスして自然と出来たので、それが結果的に切なく優しいニュアンスになったんじゃないかなと思います」
―喪失感に打ちひしがれながらも、なんとか前を向こうと葛藤している主人公の姿が浮かんできて胸を打たれました。
「そう感じて頂けたら嬉しいです。曲の最後のほうで少し前を向きつつあるけど、主人公はまだ悲しみの雨の中にいます。大切な人を失った悲しみの雨を、晴れにすることはなかなか簡単なことではないけれど、<少しずつ受け入れることで前に進んでいこう>というメッセージを込めているので」
―また今回のMVはプロローグが入っていて短編映画のような作りになっていますね。このセリフもAKIHIDEさんが考案したものですか?
「そうです。より具体的に楽曲のストーリーを明確にするスパイスとして入れ込んでみました」
―MVではギターも雨に濡れていますがあれは実際にAKIHIDEさんがステージで使うギターを使っているんでしょうか。
「あ、あれは違います!レプリカのギターを探してきて撮影しました」
―そうなんですね!安心しました。このMVを観たファンの方も大切なギターが壊れてしまうんではないかとドキドキしていると思ったので。
「いや~それはさすがに出来ないです。大切な相棒を雨に濡らすわけにはいかないので」
―同曲は人気テレビアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマにも起用されていますね。BREAKERZでは過去に何度かタイアップがありましたが、今回ソロで初のタイアップです。いかがですか?
「純粋に嬉しかったです。ある程度歌詞が出来た段階で、今回このお話を頂いたんですね。コナンという歴史あるアニメにBREAKERZだけでなくソロでも使って頂けるというのは本当にありがたいことです。“RAIN MAN”の世界観はコナンの世界観と通じるところがあると思うので、これをきっかけに僕の音楽がひとりでも多くの方の耳に届き、何かを感じてもらえたらなと思っています」
―AKIHIDEさんが思い描く雨の情景をより深く表現するために、サウンドはもちろんですが今回はジャケットワークにこだわりを感じます。初回限定盤は、ちょっとアンティークな装いのAKIHIDEさんが印象的です。
「ツアータイトルを< RAIN MAN >にしようって決めたと同時に、イメージが浮かんでいました。絵本の世界から抜け出してきたようなキャラクターにしようって」
―手に持っている黒い傘も素敵ですね。
「この傘は1920年代のものらしいです。そういうこともあって、写真全体の雰囲気も味が出ていますよね」
―そして通常盤にはオオカミと可愛らしいキャラクターが描かれています。このオオカミはAKIHIDEさんでしょうか。1stアルバム『Amber』ツアーのグッズでもAKIHIDEさんがオオカミとして描かれていましたよね。
「なぜかオオカミなんですよね。デザイナーさんのイメージでそうなってます。でもよく考えたらオオカミ男って満月の夜に変身するじゃないですか。確かに僕は月をテーマにしているので、あながち間違いではないのかなって。月という<音楽>の存在があるから僕自身、日常から変身できているのかなとも思いますので縁は感じています」
―曲から連想されるイメージをイラストと独自の言葉で綴ったブックレットもついてきますね。
「雨をテーマにしようと思った時に、神様のナミダから生まれた<レイン>が雨として雲の中から地上へ降り、そこで出会ういろんな物語を経て虹を渡り空へ帰っていくというおおまかなストーリーの大筋が僕の中で生まれました。彼らが出会う物語は全部で8個。人間が避けて通れない宿命とされる仏教の教え<四苦八苦>を基盤にしています。通常盤のジャケットに登場しているレインたちが手に抱えているものは、出会った人々の<苦>を表現しています。“RAIN MAN”ではじまり“RAINBOW ROAD”へ繋がっていく。彼らはそっと寄り添い、あらゆる苦しみを空へと持ち帰り、心を癒すお手伝いをしています。それで、“RAINBOW ROAD”の虹は8色になっているんです」