インタビュー

ゲスの極み乙女。『魅力がすごいよ』

 

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[ interview ]

1stシングル“猟奇的なキスを私にして/アソビ”も好調で、バンドシーンのみならず、J-POPの最前線に浮上したと言えるゲスの極み乙女。が、初のフルアルバム『魅力がすごいよ』を完成させた。〈エキセントリックかつダンサブル〉というイメージを覆し、よりポップに進化した作品の魅力について、中心人物の川谷絵音(Vo.&Gt.)に話を訊いた。

このアルバムは暗いんだけど、実はすごく前向きなアルバムなんです



川谷絵音が本当にやりたかったこと。それを初めて実現させたのが、ゲスの極み乙女。の1stフルアルバム『魅力がすごいよ』だ。今年の4月にindigo la Endとの同時メジャーデビューという前代未聞の快挙を達成した後、川谷はそれぞれのバンドの制作とツアー、さらにはその間のプロモーションなどで忙殺される半年間を過ごしてきたが、その過程で余計なものが削ぎ落とされていったのだ。

「最初は『魅力がすごいよ(笑)』っていうタイトルだったんですよ。“猟奇的なキスを私にして”からの流れで、よりポップなものにしたいとは思ってたんですけど、歌詞の内容は<(笑)>に則したものというか、これまでの流れを踏まえた皮肉っぽいものにして、第一章を完結させるっていうイメージだったんです。でも、そういう歌詞ってバンド名に引っ張られて出てきたもので、そもそも自分がやりたいことではなかったんですよね。なので、今回は何も考えずに好きなものを作ろうと思ったんです」

ノリでつけたバンド名に加え、メンバー全員がプログレ好きで、高い演奏技術を持ち合わせていたこともあり、彼らはしばしば単にエキセントリックなバンドだと思われがちであった。もしくは、フェスをにぎわせる〈4つ打ちバンドの急先鋒〉という見え方もあったかもしれない。しかし、もともと川谷はオリコンのチャートを逐一チェックするポップス的な志向の持ち主であり、本作はそこに立ち返った作品なのである。

「今回、俺のポップ・スイッチみたいなのが入ったんですよ。〈ここはこういうメロディじゃないとダメだ〉っていう、ストライクゾーンみたいなのがもともとあって、最初の方はそこから外れたものも入れようと思ってたんですけど、最終的には全部そのゾーンに収束させたくなったんです。〈フェスで盛り上がる曲を作ろう〉とか一瞬考えたときもあったんですけど、そういうことを考えるのもダサいなって思うんで、今後はホールとかでもできるようにシフトしていきたいと思っています」

メロディはあくまでポップで聴きやすいが、演奏に耳を傾ければ、前述のプログレ要素をはじめ、高度なアンサンブルが詰め込まれた作品でもある。ニューウェイヴなシンセのリフが印象的な“サリーマリー”は、後半にショパンの“子犬のワルツ”へと変わっていったり、“光を忘れた”ではウォーキングベースやフリーキーなピアノによってジャズの色合いを強めたりと、曲調も実に幅広い。一方、〈今日もまた 嫌なことばっかり〉と歌う“ラスカ”が一曲目に置かれているように、内省的なムードも作品の特徴。これは本作のレコーディングが決して順風満帆ではなかったことを示しているが、ここにはもっと重要な意味が含まれている。

「歌詞が暗くなったのは、別に後ろ向きだったわけじゃなくて、このバンドが自分を出したいと思えるバンドになったっていうことなんです。これまではindigo la Endで自分を出していて、ゲスでも自分を出してるつもりではあったんですけど、バンド名に引っ張られて皮肉っぽい歌詞を書いてたのが、“だけど僕は”(シングル“猟奇的なキスを私にして/アソビ”に収録)っていう曲を作ってからは、このバンドでもちゃんと自分を出したいと思ったんです。なので、このアルバムは暗いんだけど、実はすごく前向きなアルバムなんです」

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実際に“ラスカ”の最後は〈言えない嘘は真実にして 届けメロディ〉という歌詞で締め括られていて、この言葉こそが、現在の川谷の偽りなき本心だと言っていいだろう。そして、本作の中で最も美しいメロディを聴かせるのが、ラストに収められた“bye-bye 999”だ。アコギの弾き語りを軸に、ストリングスと女性コーラスで彩られたこの曲で、アルバムは厳かに幕を閉じる。

「フルアルバムだからこういう曲があってもいいんじゃないかと思いつつ、僕も途中まで半信半疑だったし、メンバーも最初は〈こんなのやって大丈夫?〉って感じでした。でも、結果的にはメンバー全員これが一番好きな曲になって、エキセントリックなこともやる一方で、実はこういうのが一番好きっていうのが、この4人でやっている理由でもあるなって思いました。やりたいことをやればちゃんと前に進めるっていうことが今回わかったので、これからはこういう一面ももっと出していきたいですね」



 

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■Album…『魅力がすごいよ』 10/29 on sale!!

■songlist…

01ラスカ

02.デジタルモグラ(フジテレビ系火曜9時ドラマ「すべてがFになる」主題歌)

03.crying march

04.星降る夜に花束を

05.列車クラシックさん

06.猟奇的なキスを私にして(ドラマ「アラサーちゃん 無修正」オープニングテーマ)

07.サリーマリー

08.ruins

09.アソビ(「isai FL」TV-CMソング

10.光を忘れた

11.bye-bye 999

■LIVE…全国ワンマンツアー「ゲスな魅力?」

11月3日(月・祝)新潟LOTS

11月5日(水)仙台 Rensa

11月8日(土)札幌Sound lab mole

11月11日(火)長崎DRUM Be-7

11月13日(木)鹿児島CAPARVO HALL

1月14日(金)福岡DRUM LOGOS

11月16日(日),17日(月)広島CLUB QUATTRO

11月22日(土)名古屋CLUB QUATTRO

11月23日(日)大阪・梅田CLUB QUATTRO

11月25日(火)高松オリーブホール

11月29日(土)赤坂BLITZ

12月7日(日) 豊洲PIT

12月9日(火)名古屋DIAMOND HALL

12月11日(木)大阪・味園ユニバース

12月13日(土)金沢EIGHT HALL

12月14日(日)松本Sound Hall a.C

12月20日(土)沖縄 音市場


■Profile……ゲスの極み乙女。

Vo/Gt:川谷絵音, Ba:休日課長, Key:ちゃんMARI, Dr:ほな・いこか。 2012年5月にindigo la Endのボーカルでもある川谷絵音を中心に結成。高い演奏技術を駆使した何が起こるかわからない曲展開に全てを飲み込んでしまう声。 プログレ、ヒップホップを基調とし、独自のポップメロディを奏でる4人組バンド。

 

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記事内容:TOWER+ 2014/10/10号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2014年10月10日 00:00

ソース: 2014/10/10

text by.金子厚武